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作品名:クォンタムマインドセオリー さまよう絆 作者:イサム

第32回   シーン36 実験成功
@摩耶大学天根研究室
部屋中央に浮かびあがっている立体脳磁図の動きが活発化する
青白い光が一閃し、立体脳磁図が消える 
電気系統が落ち、沈黙が研究室を包む
じきに電気系統が復活し、徐々にシールドルームの様子が見えてくる
天根  どうだ、下地くん
下地  はい、博士。高橋さんのバイタルが低下中。間もなくゾンビ状態
天根  どういうことだ?
下地  数値的にはエスの移動が、井上さんから高橋さんではなく、高橋さんから井上さんに起こったことを示しています
天根  逆だったか
下地  はい、予定外ですが、想定はしていました。いま脳磁計の数値をチェックします
天根がマイクを持ち、井上に呼びかける
天根  聴こえますか。井上さんですか? 高橋さんですか?
井上  ‥‥高橋です。‥‥声が変だ
下地がモニターを見て拳を握りしめる
追いかけるように政岡が歓声をあげる
遠藤  成功なんですか? 井上さんが嘘を言っているとしか、思えませんが‥‥
下地  ハイパーメグの前では、人は嘘をつけません。嘘をつくとすぐ脳波に表れるからです。逆に真実を言うときにも個人特有の脳波が表れる。今まさにそれを確認したのです
遠藤  では、どんな部屋の壁紙の色とか、小学校の担任の名前とかを訊く必要は‥‥
下地  個別の嗜好や記憶を尋ねる必要はまったくありません。あらかじめモニターしてある高橋さんの脳磁図を、井上さんの脳磁図と照らし合わせるだけで十分なのです。出ました。99.89%一致
拍手をし、高橋の資料を手に下地の後ろに立つ平松
平松  下地先生、現在の高橋さんの脳磁図をモニターして
高橋の立体脳磁図が空間に浮かびあがる。きわめて活動の少ない立体画像
下地  生命維持活動が延髄系に移行しています。完全なゾンビ状態です
平松  初めて見るわ。こんな脳磁図
井上  ‥‥私もです、学長
平松  ありがとう、下地先生
天根に握手を求める平松
平松  おめでとうございます、博士
天根  学長、まだ、実験は終わっていません
平松  十分ですわ
研究室を出ていく平松、八津川
政岡  これがトランシングです、遠藤さん
遠藤  信じられない
政岡  信じる、信じないの問題ではありません。事実なのです
遠藤  実験段階なのでしょう?
政岡  これは人為的な実験。世の中には意図せずトランシング現象に巻き込まれる人が大勢いる。その事実は変えられない。馬場くんのケース、調べ直していただけませんか
遠藤  難しいと思いますよ、いろいろ
政岡  あの、馬場くんにトランシングした人物の見当ならつきます
遠藤  ‥‥
政岡  馬場くんが警護していたという、病室の患者
遠藤  ‥えっ?
政岡  小森友也‥‥
研究室のすぐ外でドア越しに中の様子に聞き耳をたてる平松


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