佐原昭吉宅 洗面台の鏡で優里の衣類を着てみる千晶 優里より体つきの大きい千晶は、優里の服がほとんど着られない ゴミ箱いっぱいに捨てられた衣類 おなか周りや二の腕を触って溜息をつく千晶 和田 先方と二億5千万で折り合いました 昭吉 そうか、予想の範囲だな。いや、ご苦労様 『優里』と呼ばれる声を聞いて、明るい表情を作り居間に現れる千晶 千晶 何? おじい様 昭吉 優里。学校の件だけどな、どうだ新しい学校は? 馴染めそうかな? 千晶 ん‥ 昭吉 まだ迷っているのか。友だちと離れ離れになるのが辛いのはわかるが、優里、本当のことを隠して付き合うのは、もっと辛いぞ。おじいちゃんは、新しい学校で新しいお友だちをつくったほうが楽しいと思うがな 千晶 ‥ん、わかった。おじい様がそのほうがいいとおっしゃるなら、優里それでいいよ 昭吉 そうか、わかってくれるか。(和田を呼ぶ)
裏六甲事故現場 一台のパトカーが現場崖上に到着する 馬場が車から降りて崖下に向かう 現場はまだ散乱した破片や、焼けた草木が残っている 小川に沿って歩くが、位牌はない 足元の硬いものがあたる 見ると白い陶器の底が地面から突き出ている。骨壷である 馬場が拾いあげるが、陶器は欠片でしかなかった 周辺を探すも、遺骨遺灰らしきものはない 陶器の欠片を胸の前で握りしめる馬場 嗚咽に似た叫び声が谷に木霊する
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