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作品名:クォンタムマインドセオリー さまよう絆 作者:イサム

第20回   20
@警察病院
無菌個室病室 
戸口に制服警察官・馬場武史巡査が一名立っている
遠藤が看病に来ている
遠藤  トモ、聴こえているなら目を開けてくれ
友也の目は閉じられたまま開かない
遠藤  そうか、まあいい。聞いてくれ。親父が最近ボケてきてなぁ。退官して六年、ほとんど家にいるせいだと思う。僕の顔を見て、ときどきお前の名前を言うんだ。今までそんなことは一度もなかったのに。この年齢になってやっとわかることがある。親父はトモ、お前のことをずっと気にかけていたんだ。離れて暮らすようになったことを、今になって後悔しているんだと思う。親父がボケてしまう前に、親父に会ってほしい。そのことを言いたくて、お前を探していたんだが、トモ。まさかこんなことに‥‥
湊がノックして入室する
湊   どんな様子ですか、弟さん
遠藤  はい、目を覚ますたびに痛がりまして、見ていられませんでした。でもここのところだいぶ落ち着いてきたようです。昨日ICUからこちらに移りました
湊   それはよかった
遠藤  ところで捜査のほうは?
友也の目がすうっと開く
湊   難航しています。暗号化されたメールはなんとか解読できましたが、携帯そのものが盗品で、しかも偽造したSIMカードを使っているので、共犯者がなかなか割り出せません
遠藤  そうですか。早く友也が供述できるようになればいいのですが
湊   んん。ま、遠藤さんも、あまり根をおつめにならんように。では(立ち去る湊)
心電図の電子音が早くなる 
友也はすっと目を閉じる
遠藤  どうした、友也。痛むのか
友也に変わった様子がなく、心電図が落ち着く
遠藤  友也、また明日くるからな
左目を開き、目で遠藤の背中を見送る友也
廊下で俯いて歩く清掃員に変装した日垣とすれ違う遠藤
馬場巡査に向かって廊下の突き当たりを指差す日垣
馬場が色めきだってそちらのほうに走りだす
日垣が友也の病室に入る
日垣は素早くカーテンを引き、戸口からベッドを隠す
友也の目が日垣の動きを追い、日垣だと気づく
心電図がまた早くなる。友也の身体が小刻みに震えだす
日垣が帽子を脱ぎ、友也を覗きこむ
  日垣の唇が動く
友也には聴こえないが、以前の記憶が断片的によみがえる
日垣 “ハンガー、てめぇ人の話聞いてるのか‥”
唐津 “罪の重さは三人とも同じだ、いいな”
日垣 “無駄話は終わりだ。じゃあ、あばよ”
友也の記憶
猿ぐつわを噛まされ、運転席に縛り付けられ、崖から押し出される光景
脈拍数、血圧が上昇する
ポケットから注射器を取り出し点滴袋に突き刺す日垣
傷ついた身体で渓流に手を伸ばす友也 
友也の目が虚ろになってゆく
生命監視機器の警報音がけたたましく鳴り出す
戻ってきた馬場巡査が異変を察知し、病室に飛び込みカーテンを開く
驚いた日垣の腕が点滴チューブや電極コードにからみ、機器が倒れる
床に倒れた機器が火花を散らす
友也の腕から点滴チューブが抜け、口からは酸素吸入チューブが抜ける
注射器を馬場に向け振り回す日垣
馬場がひるんだすきに病室から逃げ出す日垣
福住医師や看護婦が病室になだれこむ
病室の隅に立ち尽くす馬場
福住  (友也がぐったりしてるのを見て)PCPSが作動していない。MEに連絡。処置室に運ぶわよ。ストレッチャー、大至急!
瞳孔を診る医師
福住  気を失っているわ。(友也の首筋に指をあて)脈がとれない。何があったの、お巡りさん?
怯えた顔で立ち尽くすだけの馬場
返答を諦める福住
ストレッチャーで友也を運びだし順次ひきあげる医師たち
その間、ベッドの頭付近にある患者名『小森友也』を見て、ただ唖然とする馬場
トイレに駆け込み鏡を見る馬場
馬場  (自分の顔を両手でさすり)誰だ、こいつは
制服の上から全身をたたいて確認する馬場
馬場  なんで俺はここにいる? こんな格好で?
腰周りの装備品をさぐる馬場。警棒の隣にホルダーに収まった拳銃がある
友也の記憶
手を伸ばした小川の流れの中に亡母の位牌
拳銃を取り出し、鏡に映った自分の顔に銃口を向ける
肘を曲げて銃口を自分のこめかみにあてる馬場


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