終業のベルが鳴り響く。それと同時に沢山の生徒がドアから流れ出てくる。 それからは掃除にいそしむもの、部活に向かうもの、アルバイトへ向かうもの、さまざまだ。
5分ほどでほとんどの教室は空っぽになる。 まばらに人はいるものの、それは部活などの生徒だ。
3年2組の教室には、一人の生徒が残っていた。 部活というわけでもなく、勉強をしているわけでもなく、ただじっと、校庭を眺めていた。 白いセーラー服と対極のコントラストを出している漆黒のロングヘアー。 陶磁器のような白い肌。紺のソックス。黒のローファー。 その生徒は、黒と白だけで構成されているといっても過言ではなかった。その少女の周りだけ、 モノクロの世界で、時が止まってしまったようだった。 彼女の名前は、津田沼沙織。
「おまたせ。」
男子生徒の声に反応し、振り返る。 その瞬間、少女の視界はさえぎられた。 男子生徒の顔によって。
「っは―ぁ。出会い頭にキスって何考えてるの」 「あんまりにも奇麗だったから。」 「私はあなたと付き合ったりしてないし、呼ばれたから待ってただけなの。それなのに、どういうことよ。」 「奇麗だよ、津田沼は」
沙織は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「柏くんって順番がおかしいのよ」 「そうか?俺って猪突猛進型だからさー。」 「で?何のようなの?」 「…津田沼って鈍感?」 「どういうことよ!!!」
さっきまでとは別の意味で顔を赤らめ、椅子から立ち上がり柏に近寄る
「鈍感でしょーよ。興味ないヤツにキスなんかしねーよ。」 「…興味しかないわけね。」 「…ばかなの?」 「さっきから人のことを小ばかにしすぎなのよ柏くんは!」
そういって柏に殴りかかろうとしたときだった。
「うばっちゃったー。なんてね。」 「…してやられたわ。」 「気づいた?俺は津田沼沙織が好きなんです。だから付き合ってください。これならわかる?」 「…順番が逆じゃないのよ。」
沙織は顔をチークを塗りたくったように赤くして、うつむいた。
「…で?告白の返事が聞きたいんだけど。」 「わたしなんかでよければ。」 「俺は津田沼がいいんだよー。」
そういって柏はまた沙織にキスをした。
fin.
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