20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:Untitled-名も無き日々- 作者:景時

第3回   放課後
終業のベルが鳴り響く。それと同時に沢山の生徒がドアから流れ出てくる。
それからは掃除にいそしむもの、部活に向かうもの、アルバイトへ向かうもの、さまざまだ。

5分ほどでほとんどの教室は空っぽになる。
まばらに人はいるものの、それは部活などの生徒だ。

3年2組の教室には、一人の生徒が残っていた。
部活というわけでもなく、勉強をしているわけでもなく、ただじっと、校庭を眺めていた。
白いセーラー服と対極のコントラストを出している漆黒のロングヘアー。
陶磁器のような白い肌。紺のソックス。黒のローファー。
その生徒は、黒と白だけで構成されているといっても過言ではなかった。その少女の周りだけ、
モノクロの世界で、時が止まってしまったようだった。
彼女の名前は、津田沼沙織。


「おまたせ。」

男子生徒の声に反応し、振り返る。
その瞬間、少女の視界はさえぎられた。
男子生徒の顔によって。

「っは―ぁ。出会い頭にキスって何考えてるの」
「あんまりにも奇麗だったから。」
「私はあなたと付き合ったりしてないし、呼ばれたから待ってただけなの。それなのに、どういうことよ。」
「奇麗だよ、津田沼は」

沙織は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「柏くんって順番がおかしいのよ」
「そうか?俺って猪突猛進型だからさー。」
「で?何のようなの?」
「…津田沼って鈍感?」
「どういうことよ!!!」

さっきまでとは別の意味で顔を赤らめ、椅子から立ち上がり柏に近寄る

「鈍感でしょーよ。興味ないヤツにキスなんかしねーよ。」
「…興味しかないわけね。」
「…ばかなの?」
「さっきから人のことを小ばかにしすぎなのよ柏くんは!」

そういって柏に殴りかかろうとしたときだった。

「うばっちゃったー。なんてね。」
「…してやられたわ。」
「気づいた?俺は津田沼沙織が好きなんです。だから付き合ってください。これならわかる?」
「…順番が逆じゃないのよ。」

沙織は顔をチークを塗りたくったように赤くして、うつむいた。

「…で?告白の返事が聞きたいんだけど。」
「わたしなんかでよければ。」
「俺は津田沼がいいんだよー。」

そういって柏はまた沙織にキスをした。


fin.


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 848