仕事を始めて3日目くらいだろうか、僕が彼女自身を知りたくなった時だった。 「彼氏はいる?」 「ええ、いますよ。でもまだ付き合い始めて一ヶ月です。2年前から知っていたんですけどね。」 彼女の芯の強さをすで知っていた僕はこう思った。好きで好きでたまらなかった男をやっと落としたなと。そう解釈するのに時間はかからなかった。彼女は男が言い寄ってきても自分が信じて尊敬できる人間以外は鼻にもかけない絶対的な理想を持つ女だと確信していた。それが彼女の魅力だと感じていた。経験は女性を魅力的にする。僕が出会った魅力的な女性はみんな経験豊富だった。かおりの瞳は様々な経験を乗り越えてきた強さのある輝きを持っていた。
「一ヶ月前って、ずいぶん最近だね。彼氏と関係があるんだ。」 「そう、彼も同じ業界で働いているので私もがんばって見返したいんです。」 そういった動機はよく聞く話だった。彼女はいい男にめぐり会えたんだなと素直にうれしく思った。 「でも物足りないんですよね。彼。29にもなってまだ親元で暮らしているし、まだ手も握ったこともないんですよ。」 「え?」 彼女は堰を切ったように次々と彼との出会いからこれまでを話し出した。向こうから声をかけてきたこと、しばらく連絡がないまま、2年が過ぎ、最近彼女がメールを書いて連絡をとり始めてから親しくなったこと。しかし彼女の理想の男には程遠い人物のように聞こえた。そして彼女は相手の男にあまり関心がないようだった。 「でも好きなんだから付き合ってるんだろ?」 「どうでしょうね。結婚しようとか言われてるけど、このままいったら、結婚するのかな。はじめから結婚を前提に付き合っているみたい。向こうは。愛されているほうが幸せなんじゃないですか?」 僕の今までの彼女に対する印象が一気に崩れた。経験の足りない女だと直感した。そして僕は彼女をさらに知りたくなった。 「セックスでいったことないだろう?」 唐突な質問に少し驚いたようだった。照れ隠しに顔を赤らめながらこういった。 「前にもそういわれたことがあります。」 「で、やっぱりないんだろう?」 下を向いて頷いたように見えた。 「付き合ってる男に抱きしめられたとき、どう感じて、何を考えてる?」 「何にも感じていないですね。それでほかのこと考えてる。」 かおりの気丈さに違和感を覚えた。何かを打ち消すために必死の気丈に振舞っている彼女の内面をもっと覗いてみたい好奇心が沸いてきた。このときすでに僕はかおりの深い危険な淵へ歩み寄っていた。かおりにもう少し近づいてみたいと思う衝動はどこから来たのか。このときはまったく理解できなかった。数日間個人的な話をしていたがその答えは見つからず、ただ、僕は彼女に魅了されることでしか抵抗できなかった
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