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作品名:蟻たちの反抗 作者:心(シン)

最終回   1
「愚かな人間たちよ。これから我らが地球を取りしきる。」
ある日、一匹の蟻(以下蟻A)がこんなことを言い出した。その蟻の集団は100匹いた。
98匹が、「そんなこと無理だ」と思った。一匹(以下蟻B)は彼を信じて問うた。
「何をすれば地球を救えるんだい。教えてくれ。」
 その目は情熱に溢れ、他者への奉仕心に溢れていた。言い出した蟻Aははっきりと何をすればいいかわからなかった。そして果敢に人間に挑んだ。靴に噛みついてみたが、まったく効いていないようだった。次に肌の露出部分を狙って噛んでみた。人間は気づかなかった。だが、Aはひたすらそれを繰り返した。Bも一緒になってやった。二匹はその日どんなに人間を噛んでやったか誇らしげに仲間に話すのだった。98匹はAとBは遊んでいると思った。自分たちは女王の為に働いているのに何だ!と思っていた。
Aはある日死んだ。人間に踏み潰されたのだ。
Bは悲しんだ。98匹も少し悲しんだ。そしてみんな口々にBに諭して言った。
「もう、あんなことはやめて普通に生きていこうじゃないか。どだいいくら僕らが地球のことを思ったとしても、非力ではどうしようもないじゃないか。」
「危険よ。人間は。あんなに大きいのよ。あなたも直にAと同じようになると思うと悲しいわ。」
 だが、Bは諦めなかった。ここで諦めるとAの死が無駄になってしまうと思った。だが、噛みには行かなかった。代わりに人間の行動を研究した。人間の歩き方、食べ物、習慣にいたるまで刻明に調べ上げ、みんなに語って聞かせた。みんな人間のことを知っていくにつれて、何とかなるんじゃないかと思い始めた。人間は赤子の時はほとんど無抵抗らしい。また、ある種の毒物に弱いことも確かめた。

 いつの間にかBの地球救世会なるものは近所の蟻の集団を巻き込んで広まっていった。10匹が40匹になり、そして100匹。しかしBにも寿命がきた。死の床でBはいいのこした。
「Aの遺志、そして私の意志を継いで必ず地球を救ってくれ。」
Bは死んだ。地球救世会はあらゆる毒物を牙に塗りたくり、人間に向かっていった。効果はてきめん。人間たちはばたばたと死んでいった。会員たちは涙を流して喜んだ。
(我々のやってきたことは間違いではなかったのだ。始導者Aそして先代のBもうかばれる。)
  この成功によって蟻たちの間でさらに救世会が広まった。結果働く蟻がいなくなった。
  働く蟻、つまり餌を探す蟻がいなくなったことで、皆が飢えはじめた。だが、とうに蟻たちは餌のとり方を忘れていた。そして、人間たちへの攻撃をやめなかった。まるで飢えた狼のように、人間が餌でもあるかのように毒を牙に塗って噛んだ。
 そして、ある程度人を道連れにして彼らは滅びた。
 人間の天下は続く。これからも・・・。


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