もう、嫌だ。
怖い。
寂しい。
お父さん‥‥お母さん‥‥
助けてよ‥‥
もう生きていたくない‥‥
「もう‥‥いや‥‥」
呟いた‥‥それだけだった。
「ルラ。そこにいるの?」
「‥‥なに‥‥」
「おつかい、頼めるかしら?」
「いいよ。」
「それじゃ、お願いね。」
「うん。いってきます。」
買い物に、行くだけだった。
ガチャッ
なのに、出会ってしまった。
目の前の広場の中央部に王の兵士がひとり、たってこちらを、私を見ていた。
逃げなくちゃ‥‥。
なぜかそう思ってしまう。
次の瞬間
ギュッ
家の中に入ろうとしたとき、兵士に腕をつかまれた。
嫌だ。つかまったら、お父さんとお母さんみたいにされる。
「放してください!」
「ちょっちょっと待って!」
「放してください!!」
「待って!聞きたいことがあるんだ。」
「えっ‥‥とっとにかく、放してください!」
「わかったから、あばれないで。」
――ありえなかった――
「‥‥それで、この村に迷い込んだんだ。」
「‥‥そう‥‥ですか‥‥」
この兵士の話によれば、
王の命令でドラゴンの住む洞窟に行き、卵を持ってこいと言われ数日前に王城から出たという。
だが、洞窟に着いたとき、運悪くドラゴンに、母親ドラゴンに遭遇した。
そして、隊の大勢が負傷し、生き残ったのはほんのわずか。
ドラゴンから逃げているとき、崖から転び落ちてほとんどの記憶を失くした。
そして今でも名前すら思い出せないという。
「それで、昨日。君を見かけたんだ。どこかで、みたようなきがして‥‥」
「そうですか。‥‥だけど、私とは、会ったこともありません。」
「そっか‥‥ごめんね。急に‥‥」
「いえ‥‥」
こんな兵士、初めて。
いつもなら私は逃げていたのに、なぜかこの兵士といると安心する。
「それじゃ、ごめんね。本当に‥‥」
「あの‥‥」
「えっ‥‥」
「‥‥よければ‥‥私のいる‥‥ところに‥‥しばらくいませんか?」
「へ?」
何を言っているんだろう?
怖いのに、嫌なのに、誘ってしまった‥‥。
「‥‥迷惑になっちゃうから‥‥いいよ‥‥」
「い‥‥いえ‥‥」
「‥‥寂しいの?」
「えっ!なっなんでもないので!」
「‥‥なにか、悲しいことでもあったの?」
「‥‥いえ‥‥ありません。」
「‥‥決めた。」
「え?」
「しばらく、君と一緒にいるよ。」
「いい‥‥の?」
「自分が誰だか知らないまま行くのも変だから、何か思い出すまでだけど‥‥」
「ありがとう。」
久しぶりだった。いつの間にか笑顔がこぼれていた。
笑うのなんて、何年ぶりだろう。
「それじゃ、君の名前は?」
「‥‥ルラ‥‥エルジャートル・ルラ。ルラだけでいいから」
「よろしく。ルラ。」
何かが蘇った。私の中の何かが‥‥。
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