村の外れに小さな祠があった。弥助という村人を祀っていると伝えられている。
毎年、元旦の夜になると、村中の家々を回って村人たちに『年の札』を配って歩く年神さまが遣って来る。
弥助という若者がいた。日頃から年を取りたくないと思っていた弥助は、今年は年神さまが遣って来る前に、どこかに身を隠そうと考えた。 村外れに野菜屑を捨てる大穴がある。 ――ここなら見つからんじゃろ。 そう思った弥助は、夜になるのを待って家を抜け出し大穴へもぐりこんだ。
年神さまが村中を回わり終えると、どうしたことか、今年は『年の札』がたくさん余ってしまった。 ――おかしいな! 今年は数を間違えたかな。 持って帰るわけにもいかず、年神さまは困ってしまった。 ――そうじゃ! 村外れに大穴があった。 年神さまは大穴に『年の札』を捨てて帰ることにした。
さて、弥助は大穴の中ですっかり眠り込んでいた。 翌朝、一番鶏の声で目を覚ますと弥助は勇んで家に帰った。 ――ぎゃっ! 誰じゃおまんは? と、いきなり女房のとめが叫んだ。 戸口には、顔も手足は皺だらけ、腰の曲がった白髪の老爺がひとり立っていた。
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