いつ頃から始めたのかは、はっきり覚えていない。美紀は、年賀状を出した相手の「お年玉くじ番号」をすべて控えている。数年前、手書きをやめてパソコンに切り換えてからは、番号をノートから年賀状ソフトに記憶させている。
理由はほかでもない。出した年賀状が1等にでも当たったら、相手にそれとなく意思表示して、なんらかの恩恵に預かろうという魂胆なのだ。しかし、未だに当たったという連絡が届いたことはない。
今日は待ちに待った当選番号の発表日だ。番号を調べていると、けたたましく電話のベルが鳴った。 「なによ、こんな忙しいときに」
相手は、中学からの親友真由美だった。いつになく声が弾んでいた。しかも興奮して早口だ。 「ちょっとちょっと、私が美紀に出した年賀状ね、1等当たってるわよ! 賞品は、32型液晶テレビか国内旅行かノートパソコンなんだけど、旅行にしない。私が出したんだから、私にも権利あるわよね。2人で行けば1人分の旅費で行けるわよ!」
「……」
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