彼が最後に残してくれた言葉。 それも彼らしく「ごめんね」だったと聞いて、私の目から急に、熱いものが流れ落ちて来たのでした。
でも・・・ それでは今まで、私はいったい誰と逢って、誰と話していたのでしょう? そう考えると私の中には、これまでの彼との、いろいろな出来事や会話が浮かんできて、頭の中は余計に、混乱するばかりでした。 そして浮かぶ言葉は「なぜ?」ばかりになって、ついついそれを、打ち返してしまっていたのです。
あの時・・・ 「逢うのはよしましょう。」といった彼。 「何故ですか?」と聞く私に彼は、 「きっとキミもボクも、一度では済まなくなるから…」 そうさりげなく答えられた言葉に、私の心は揺さぶられたのでした。
「運命というやつがあります。」 「逢わなければ通り過ぎるだけのことが、逢えば運命へと変わることが、男女の中には屡々あるものなのです。」 「人はそれを偶然のように思ってしまうのですが、実はそれこそが、必然が生み出した偶然なのですよ。」 「そして互いが感じた必然性に気づいた時、運命だったと感じるのです。」 「そう、まるでキミとボクのようにね。」 私は彼女に、あれこれと質問を繰り返しているうちに、そんな彼の会話を思いだしていたのでした。
そして疑問を投げ付けているうちに、いままでの娘さんとのやり取りが、彼が私に残してくれた、せめてもの思い遣りだったのだと気づいたのでした。
そんな彼の優しさを考えると、私の瞳も心も涙に濡れて、もう、画面の文字は読むことが出来ません。 私はいつまでも、言葉に出せない言葉を、ただ胸の中で叫び続けていたのでした。
とは言っても、やはりたくさんの疑問が残ります。 それにまだ、彼がどのような状況から、そうした最後の時を迎えたのか知りませんでした。
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