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作品名:大人のための異文童話11 ニジイロトカゲとガラスのしっぽ 作者:天野久遠

最終回   光の街の動物たちシリーズより
ボクは陽気なニジイロトカゲ
光を受けて虹色キラキラ
輝くカラダが自慢だよ


長いシッポもお気に入り
どこで切られてしまっても
いつでもすぐに元通り
決して嘆いたりしないんだ


ある時ひとりの少女に会った
暗く湿った森の中
少女もキラキラ輝いていた

だけど、なぜだか少女は泣いていた
何がそんなに悲しくて
何を思って泣くのかなぁ?
そんな綺麗なカラダを持って
嘆くことなどないだろうに


ボクは寂しいニジイロトカゲ
光を受けて虹色キラキラ
輝くカラダが自慢だよ

だからキミにもあげましょね
ボクの虹色キラキラ輝くシッポ
代わりにボクにもくださいな
キミの素敵なキラキラ輝くそのシッポ


いつのことかはもう忘れたけれど
いろんなことを話したよね
そうして交換ふたりのシッポ

キミのシッポは生えただろうか?
ボクのシッポはもう元通り
もう一度キミに会いたくて
今でも大切に持っているんだ
キミの透けて輝くガラスのシッポ


ボクは憂鬱なニジイロトカゲ
光を受けて虹色キラキラ
輝くカラダが自慢だったよ

だけど日増しに干涸びて
だんだん虹色キラキラしなくなった
以前のように輝くボクに戻りたい
元気にキラキラ輝くキミに会いたいよ


ある日のこと。

グラスバニーが光も稀にしか届かない、それはそれは深い森に迷って泣いていると、不思議なトカゲと出会いました。

そのトカゲは全身に光を浴びると、グラスバニーと同じようにキラキラと輝くのです。

ガラスの体のことで、いつも学校で虐められていたグラスバニーは、すぐにそのニジイロトカゲと仲良くなりました。

ニジイロトカゲも、この深い森の中で毎日ひとりで暮らしていたため、お友だちが出来て大喜び。

楽しくて仕方がないふたりは、時間を忘れて遊んだのでした。

いつの間にか日の光りも、すっかりとその姿を隠してしまっています。

グラスバニーは、心配しているお母さんのところへと、やはり帰らなくてはなりません。

ふたりの思いは同じ。

このままふたり…いつまでも楽しい時間が続けばいいのにと。

そんなふたりは、動物たちも恐れて近付かない泥沼の、傍にある小屋の中で約束をしました。

グラスバニーはキラキラ輝くガラスのしっぽを、ニジイロトカゲは虹色に輝くシッポを。

お互いのシッポをもぎ取って、その『約束の品』を再会の証しとして交換したのでした。

毎日、ガラスのしっぽを眺めて暮らすニジイロトカゲ。

ひとりでは、決してこの深い森からは出ることの許されないニジイロトカゲ。

ニジイロトカゲの体は、森の隙間に見える遠い向こうの空が、ひときわ輝くとその光で虹色に輝きます。

あれから幾年…。

今でもニジイロトカゲは、遠い向こうの空が輝くと、約束を思い出して欲しくて、いつも大きな虹を架けているのでした。


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