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作品名: はるか 作者:サルゲーネフ

第1回   1
日本が打ち上げた電波望遠鏡衛星はるか。それは作者による捏造でもなんでもなく、今も宇宙を回っているはずだ。遠地点高度二万一千六百キロメートル、近地点高度五百六十キロメートル。約六時間で地球を一周する。八メートルのアンテナは、地球各地の電波望遠鏡と連携し、超長基線電波干渉計を使って実質で直径三万キロの電波望遠鏡を構成するという。
 はるかがとらえた電波は、地上に送信され、磁気テープに保存される。それをコンピューターが映像化するわけだが。
 ある時、その映像が突如として規則性を持ち始めた。これは何かの映像ではないか、と考えた科学者が、ありとあらゆる暗号解読方式をためしてみた結果、なんとそこに映っていたのは、宇宙戦争の映像だったのである。
 どうやら、侵略される星ぼしと、侵略する側の戦闘の記録らしい。惑星が次々に破壊されていく。
 そして科学者は恐ろしい結論に達した。戦場が太陽系方面に移動してきているというのだ。彼らは超光速航行の技術を確立しているらしい。
 そのドキュメント映像では、超光速エンジンの作り方も放映していた。避難する星の住民の様子を映し出していた時、実に克明にそれが記録されていた。
 このままでは、地球もあの恐ろしい異星人の惑星破壊爆弾で爆破されてしまう。
 地球人たちはこぞって映像で見た通りに超光速エンジンをつくり、宇宙船をつくりはじめた。
 そしてついに木星の軌道上にエイリアンの宇宙船が出現した時、大慌てで地球を脱出したのである。その宇宙船のチケットを買えたのが大金持ちであるということは、言うまでもない。地球に地球人全員の避難用宇宙船を作るだけの、金も資源もない。
 地球に残された人びとは、まな板の上の鯉のごとく、一瞬の死を待っていた。
 しかし、木星軌道上に現れた宇宙船は、脱出した船団を追って、再び超光速航行に入ってしまったのである。
 脱出船団は逃げたが、しょせん映像で垣間見ただけしか理解していないテクノロジー。またたく間に追いつかれてしまった。一人でも多く乗せるため、武装はしていないから、やけくその攻撃もできない。
 とその時、脱出船団に英語の通信が入ってきた。
「いや、わたくしも長いこと銀河公共放送の受信料回収員やっていますけれど、船団つくって、逃げてまで受信料を払いたくない、という種族に遭遇したのは初めてですよ。おたくらの存在はとっくに銀河公共放送の潜在的視聴者惑星としてリストアップされていました。言語もその時分析しました。宇宙に電波望遠鏡打ち上げるというニュースがあったので、わたくしが来た次第です。銀河公共放送は各惑星の受信料で成り立っています。はやく受信料払って下さい。えっ、戦争はどうなったかって。はあ。はあ。もしかしてお客様の言っているのは、お子さま向けの娯楽用架空戦闘番組のことですか。あの物語で、幼児は、科学技術を学ぶのです。えっ、なに、自分の惑星が破壊されると思ったですって。銀河の全ての文明は、言語と技術を手にした瞬間から、相互に殺し合うことをやめています。ましてやテクノロジーを使って、集団で無抵抗の市民を虐殺するなど、あるわけがないじゃないですか。
おたくの星もそうでしょう。圧倒的テクノロジーや物量をもってして、無抵抗の市民の大量虐殺を行う、こんな非常識な文明があるわけありません。えっ、なんですって、声がふるえてて、よく聞き取れないんですけれど」


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