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作品名:精進料理 作者:大黒屋

第2回   2
きょうは朝から8人のお客さんが入れ替わり立代わりで繁盛したが、5時になると潮がひくように客足が途絶えた。
10枚以上ある本日の来店客の鑑定書をチェックしていると…
連絡もなく入って来たのは菩薩元子を易名とする占い師岩国元子、老けて見えるが43歳だ。
イヤな奴が来た。過去に何度もペアを組み仕事をし、そのたびに利益配分で煮え湯を飲まされて来た。
「商売繁盛でうらやましいね」と言いながら5割引きのシールが貼られた袋から菓子パンをひとつ取り出し、「差し入れよ、お腹がすいてると思ったから…」「こんなに気がつく女はワタシだけよ」
(手掴みでパンを出すなよ)
オレは好みの女なら手掴みでもかじっていても構わないが、元子の触ったパンなんか手袋をして触ってもごめんだ。
「大先生がご視察ですかな」と追返そうと嫌味を言いうが、「ライバルに塩を贈るのよ」とふざけた返事。
時計の針が19時を指す頃帰り支度をする。

「暇で稼ぎはゼロなの」と哀れみをこうような台詞。
オレが使用した鑑定書を目敏く見つけ、財布から大事そうにファミレスの割引きチケットをちらつかせながら「私が紹介したイベントでは稼いだわよね」(二年前の話を持ち出すなよ)
「ワタシへの恩義が重荷になってない?苦しめてゴメンね」
「いまこそあの素晴らしい日の借りを返させてあげる。」
(永久に消えてくれ)結局ファミレスへご招待となった。
オレは早く帰りたいがためにカレーライスを注文。
「ワタシはこの美貌を維持するために野菜中心の食事ばかり、きょうはしっかり食べます」と勝手にステーキをオーダーした。

「今までの私はおんならしさを出してないことに気がついたの、謝罪のため静かにところでゆっくり話しましょ」とさも贈答品か見舞金でも払うかのような口振り。
「お詫びの品も用意してあるの、ここでは人目もあるし…」元子の持つ荷物はと言えば質流れで買ったバッグだけ。
オレは今までのピンハネ分を小切手で返すからとか、謝罪文を涙ながらに渡すから場所を変えるのかと単純に思い込んだ。

まんまとラブホへ連れ込みやがって。
「あなたが欲求不満みたいだから、清水の舞台から飛び降りる気持ちで来てあげたのよ。私は可哀相な生け贄、いいえ!カ・ワ・イ・イ生け贄」
(道頓堀に飛び込んでくれ)
部屋のドアを閉めるやいなやいきなり両手をオレの腰に回し抱き付いてきた。まるで昔有名だったプロレスラーサンダー杉山のさばおりが思い浮かんだ。
そしてナメクジみたいにヌルッとした分厚い唇からは腐った玉葱と納豆みたいな口臭がした。

元子は身長157cm推定体重75キロ。三白眼にトンボメガネ赤ら顔に前歯二本は出歯で大きい、しかも部分入歯。ハイヒールの類いは簡単にヒールが折れるから履かない。
いつも古着屋で買ったスーツにジョギングシューズだ。
いくら高級志向でないオレでも腐った飯は食えるわけがない。

オレは逃げる方法を考える。
まず、ぶん殴り逃げる。これでは弁護士を使い告訴されそうだ。
酒を飲みベロベロに酔っ払い、元子に諦めさせる。力の強い元子ならオレが酔っ払ったのをいいことに逆レイプに出るはず。
窓から逃げる。しかしここは6階だ、元子の餌食になるか死を選ぶかだ。
ヘビのように執念深い元子だから、プライドを傷つけず穏便にすませないか?

オレが熱いコーヒーをチビチビ飲むふりをしていると、バスローブに着替えた元子が現れた。まるでカットする前のウインナーソーセージのように、ウエストを帯でキツく絞っている。オレの横に座り脚を組み芸者のようにうなじを見せようと襟を引張るが、ビリビリという音と一緒に白いブラと組んだ太股が露になり肌色のランジェリーが見えた。スーパーで3枚800円の広告品だろう。
広告品のことよりもラブホではバスローブの中に下着をつけるものなのか?
(こんなバカはみたことない)

「ワタシは女よ、なにもしないの」と元子。「ご馳走はゆっくりともったいつけて味わうもの、ファーストフードは掻込むもの」とわざとややこしい話をし時間を稼ぐと同時に窮地を脱出する方法を考える。オレは諦めない。

「レディファーストでシャワーをどうぞ」
「お互い初めてのパートナーだから、慎重に進もう」と元子をシャワールームへ追い立てる。
シャワー音がすると同時にオレは音を立てずに玄関に向かい、履きにくいように元子の靴を部屋に向けて並び変える。
こうしておけば体についたシャワーの湯を拭き取るのと靴を履く時にも時間がかかる。
しかし、バスタオルを巻き裸足で追いかけて来たら…

オレは靴を履こうとしたが、簡単に履ける靴なのに慌ててしまい履けない。
小走りにフロントで5000円扎一枚をわたしお釣りも貰わずに外に出たが、駅で電車を待つ間は6分位だが30分にも感じた。
帰宅し水ではなく湯で15回うがいをしたころ。
突然写メ付のメールが入った。
「よくも恥をかかせてくれたな!このままですむと思ったら大間違やで、ふざけんなよハゲ!」
添付データをみると…元子が怒鳴っている写メがあった。
差し歯の大きな前歯が見え歯の隙間に緑色のブロッコリーの食べ滓が付着していた。


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