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作品名:精進料理 作者:大黒屋

第1回   占い師のグルメ日記
ゴールデンウイークがおわると五月病がはやるとはよく言ったもんだ。
朝から客はゼロ。
気晴らしに普段は食べない昼飯でもいこうかと、席を立とうとした瞬間にドアがあき「お昼でもみてもらえますか」の声がした。
「ドラゴンハウスの黒龍はお客様のためなら飲まず食わずで頑張ります」
ややうつ向き加減のお客様の顔に笑顔が浮かんだ。直感的にこの客はリピーターになるが何か引掛かるものがあると感じた。
鑑定結果はかなり重く占い以前の心理療法が必要だ。
内容はリタイアした旦那と年金暮らしだが留学までさせた二人の息子が実家にはよりつかない。
孫でさえ他人行儀。
息子夫婦までも鑑定しわかったのは二人の息子とも嫁には頭が上がらない。
旦那は病気がちだが生活には困らない。
オレは得意の前向きな言葉でクロージングした
還暦とは生まれ変わる年を言う、つまりあなたは第二の人生では三才という計算になると慰める。
さらに、今までは旦那さんの世話と子育てに追われご自分の時間がなかったはず、「私の人生はなんだったの」とのお気持ちでしょう…
生活の心配がなくなりしかも孫の面倒をみる必要はない。
これを機会に自由に生きていけばよい。世の中には子供がバツイチになり還暦過ぎても孫の面倒をみながらパートに出るひともいます。
還暦すぎの奥さんはなにかが吹っ切れたかのように見えた。

翌日の昼前だが…
レイバンのサングラスの女性が訪ねて来た。ジーンズに胸の谷間がみえるタンクトップ、ラフに羽織ったピンクの上着。足元はピンクラメのペディキュアが施された素足にミュール。
「綾子です。これから私のために好きなように生きていきます」
「先生はたしか独身とかおっしゃいましたよね」
風呂敷包みには料理がギシギシに詰込まれた重箱、ブリの照焼きにアスパラの牛肉巻き、伊勢エビのサラダに赤飯。チェリーやバナナがふんだんに入った杏仁豆腐。これにオレの好物のシュークリームがつけば文句はないが…
しかし、食べようにも箸もスプーンもない。「私としたことが…」コンビニに走る還暦オバサン。
その間に彼女の鑑定書を再度分析するが、せっかちだが情熱的で努力家、生まれ育ちがよい素封家の出。
オレは言葉には出さずつぶやいた。「やれやれ、料理は食べたいが賞味期限どころか、使用期限の切れた還暦オバサンは食えねぇ」
幕の内弁当は三日に一回の割合で差し入れされ、還暦オバサンいわくは「私は四年制大学の法学部を出ています。この行為はストーカー規制法には触れません」
さらに二週間目には「私は二回目の人生の三才です。それでは黒龍先生から私をみたらお孫ちゃん」
「百歩譲って20歳を加算し23歳にまけといてあげる。これなら先生の若い彼女になる計算よ」
孫でも娘でも勝手なごたくを並べてからに、日本は言論の自由は認められているから好き放題してからに…

しかし、オレはストーカーされるほどイイ男ではないし、タダ飯を食らうほど生活に困ってもいない。
還暦オバサンは鑑定では型にはまった真面目人間。しかしこういうタイプにオレのような遊び人が接触し、なおかつ還暦オバサンの運気が弱くオレの運気が強い時期とくれば強いほうへひっばられる。今までとは別人に化けてしまう現象がある。

「今後の素晴らしい余生のためにデザイナーズホテルとかいうホテルを視察したいのですが、ご一緒願えますか。お時間をいただくのですから休業補償はいたします」

(冗談やないで!ふざけんなよ!どの面下げてデザイナーズホテルや!しばくで、おばはん!)とは思わず…
オレはホテルの部屋で食べるという手作り高級幕の内弁当に目がくらみ泣く泣く了解した。

ニョートンの引力の法則をつくづく感じるとはこのことだ。
先人たちは偉大であると感心している場合か…

ドレッシングルームのオールヌードの還暦オバサンを盗み見たが、胸の谷間はランジェリーの為せる賜物。
たれ乳にたれ尻、おまけに顔はたれパンダ。全身いたるところにシワ。
おまけに下腹にはセルライトのお祭り騒ぎ。ベッドの中では人が変わったようにやたらと抱き付き、まるで柔道の寝技をきめられたようにオレは動きがとれない。
じじいに抱かれるギャルの気持ちがわかるってもんだ。
オレはギャルをヒントにマグロ状態を決め込み還暦オバサンを好き放題にさせた。
勝手にオレの分身を触り、発射準備させて騎馬上位にて勝手にピークを迎えた。
まるでロデオのように…いやロデオとは暴れ馬に人間が振り落とされるが、還暦オバサンは動かない馬にまたがりひとりで暴れているというほうが的を得ている。
同時にオレの可哀相な分身もおとなしくなってしまった。
オレは童貞を奪われた少年の気持ちになっていた。人生に汚点を残してしまったのか、いやオレの人生は傷だらけだ。
今さらどうなるものではない。女性遍歴の中で最高年齢のデータが更新されただけだ。

余談だがあの時発射してないことがバレてしまい、散々叱られたうえ手作り高級幕の内弁当の中身がニンニクや山芋、ウナギなど精進料理ならぬ精力料理にかわったのは自然の摂理だろう。


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