官僚達が各々思考を駆け巡らしていると、1人の官僚が、手を挙げ、発言を求めた。
アルスは、手を挙げている者を指し、 「ジール、何か良い案があるのか?」
ジールと呼ばれたものは、顔を上げ、 「外交をしてみてはいかがでしょう?」
「がいこう?」 アルスは聞きなれない言葉に思わず聞き返した。
「はい。陛下が王に成られてからはただの一度もありませんが、昔は、年に何度か他国へ赴いています。」 「行って何をしているんだ?」
「さぁ、私自身以前の政権では下っ端でしたので、実際の外交に同行したことは無いのですが、 隣国に渡すために、考えられないほどの金銀財宝の貢物を用意したのが記憶にあります。」
「ふむ。つまり、貢物を渡して相手の機嫌を取り、情報の提供、もしくは今後も和平をといった所か。」 「恐らくは。。。」
「いいだろう。それをしよう。それが最も解りやすそうだ。」
「では、手配を始めます。」
「頼む。ああ、それと。」
アルスが言葉を続けようとした途端、ナッシュが強めの声で、 「なりません。絶対に認めることは出来ません。」と部屋に響き渡るような大きな声を出した。
その大きな声に一同がナッシュの顔を凝視した。アルスは、後頭部をポリポリと書き、 「まだ、何も言ってないが?」
「アルス陛下は、自らザクトに行くからその用意も合わせてしろとジール殿に言うつもりでしたね。」 「ほぅ。さすがは、古参の臣下だな。俺の言いたい事もこうも早く汲み取ると話が早くていい。」
「行くのはダメだと行っておりまする。あなたは王なのですよ。その王が、軽はずみな行動を取るべきではない。」 「軽く考えているつもりはない。事の重要性は、誰よりも強く思っている。」
「何かあったらどうされるおつもりですか。敵国なんですよ。」 「こちらが火を付けない限り、相手は敵とは思っていないよ。」 「臣下に任せたらどうなんですか?そんなに我々が信用できませんか。」
「そんな事はない。信用しているよ。お前達に任せているではないか。」 「では、今回の外交の件、ジール殿達外交官に一任するということでいいですね。」
「ああ、問題ない。外交は、全てジール達に任す。」 アルスから出た言葉に、ナッシュは睨みつけていた目を和やかな目に戻したが、 次のアルスの言葉に、更なる厳しい目をする羽目になった。
「外交は、ジールに任すが、ザクトには、俺も同行する。ジール達を護衛する兵隊にでもなって傍に付いていく。」
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