「変えるとは言ったが、言葉が悪いかもしれない。俺は、元の状態に戻すことを考えている。」
「元の状態?」 アルスの言葉に、クビを傾げるものも少なくなかった。
「このノイエは、今の5国の縮図と考えている。中央に城を置き、その周りにはいくつかの州都がある。 州都にはそれぞれの長がいて、村や町を統治している。これらの視野を広げれば、何かに似ていると思わないか?」
アルスの不敵な問いかけに顔を見合わせるばかりで答えの出てこない官僚達を尻目に、言葉を続けた。 「央国という城が中央に建ち、それを囲うかのように4つの国が周りを囲う。 一つの場所では、産業に優れている。鉄鋼に優れた場所もある。 加工職人が多く存在する所もあれば、漁業、船舶に優れた所もある。 それぞれの場所には元々役割があった。それぞれの役割をこなし、統治していた城に税として収めていた。 それで成り立っていた筈だ。 だが、長きに渡る歴史の中、それぞれの場所では、自らの領地で生活を営むことが出来ると考えが芽生えた。 それが同時なのか、どこかが突発的に起こしたのは、分からない。だが、いつの間にか4つの土地には、4つの国が出来た。
国には、王が立ち、それぞれが各々に政治をやりだした。 この事態にいち早く気付き、且つ阻止しようと思う国が現れた。当然、央国だ。 だが、4つの国を一度に敵に回すのは到底ムリ。どこか一つを襲えば、他の3国が黙っていまい。 だからこそ、4つの国を認めざるを得なかった。
だが、安易に認めてしまえば、これからも平然と自分達の意思に逆らう行動が出る。 だから、国を認める代わりに、自国の他とは違う脅威を見せつけ、5国の中で唯一例外とさせた。 それが、神の鉄槌と言われるものであり、央国が常に上から我らにモノを言う道理だ。」
「元々は、一つの国だったという事と言うことですか?」
「そうだ。この構造である限り、央国が我々よりも一段高い位置に属し、 我々に対し理不尽この上ない物言いをしてくる事も理屈は解る。
だが、解るコトと納得できることは別だ。まして、民を思い、国を繁栄させているのであって、 央国を生きながらえさせる為にやっているわけではない。そんな事もわからないモノに統治させようとは思わない。
偉そうにふんぞり返るしか出来ないならば、俺がとって変わる。 央国にくれてやる気はない。」
「だから、他国へ攻め入ると。全てを元に戻し、一つの国にさせるという事ですか。」
「そうだ。そしてそれをこのアルスがやろうと言うのだ。」
「なんと大それた事をお考えなされるのか。元が一つの国だったなんて誰が思いつくか。 ノイエの古い見聞にもそのような記録は残っていないというのに。」
「当然だ。古い見聞は、国が成り立ってからの出来事ばかりだ。国の歴史だ。それも至極当然。 だが、央国から見た道理では、それとは異なる。だから、偉そうな立場でモノを語る。 何故、そうなるかを考えれば自然と先の考えに行き着く。」
「他国への侵攻の件、了解しました。早速、その準備に取り掛かりましょう。」
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