風の民が部屋を去り、静寂が残った空間で、
「さて、寝るか。」
そう一言言うと、アルスは、さっさと上着を脱ぎ、そのまま寝床に入り、寝てしまった。
ジール達は、アルスのこの図太い程の度胸に半ば感服しながらも、 さすがに命が狙われるという危うさに居心地の悪さを感じていた。
「我らはどうしましょう。」 「陛下に何かあっては大事にいたる。我らもここで警護を。」 ジールが、声を震わせながらも、さすがはアルスの配下と感心したくなる言葉を紡ぎだしたが、 シグナスが、クビを横に振り、 「皆様はお休みください。 これ以上の逗留は、返って危険です。陛下も、明日には、帰路に着く筈です。 今回の件が失敗したとわかれば、帰路の最中も何かあるかもしれません。
ジール様達が、十分な休みを取らねば行動が遅れます。
我ら親衛隊が交代で番をします。
陛下にもジール様たちにも指一本ふれさせません。その為の我らです。」 そう言うと、シグナスは、ルクスたちに指示し、四方を囲むように警護にあたった。
翌日、何も無かったようにアルスは、眼を覚ました。 眼をこすり、布団を出ると正面に肩膝で座っていたシグナスに気付き、 「ご苦労だったな。寝ずの番か。シグナス。」
「これが私の役目ですから。」 「交代でと言っていったのにお前が寝ないから部下も徹夜なのでは無いか?あまりムリをするなよ。」
「はっ。何も無かったようで。」 「そのようだな。まぁ、本当の真意はわからんがな。・・・・居るか?」
「こちらに。」 姿は見えずとも声がといった感じで部屋のどこからか声が聞こえた。
「お前達も寝ずの番か。」 「王より与えられた使命を全うしたにすぎません。 まして、王に仇なすものを黙って見逃すのは本意ではありません。」
「ふん。忠誠心結構。報告をしろ。」 「はっ、陛下のおっしゃるとおりでした。 この屋敷に火をつけようと、周りを藁で囲い火をつけようとしているものを見つけ、即刻殺害。 藁は水を湿らせ、火の付かぬようにしておきました。」
「殺したものは?」 「そのまま放置しております。」
「解った。よくやった。我々はこのまま帰路に着く。その間、身辺警護を行ってくれ。」 「御意。」
民の気配が消えた頃、ジール達も起き上がった。 陛下以下、自分達の命がまだあったことに非常に安堵していた。
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