一行は再び、元の部屋に戻された。 ささやかな宴を用意している為、後ほどと言われ、使いの男は去っていった。
ジールは、自分の役目を果たせた事に安堵してザクトに来て初めて笑顔が出ていた。 シグナス達、親衛隊はアルスを囲うようにして、話をしていた。
「驚きです。軍事国家。あの言葉は嘘では無かったですね。 私もあのような状況を見たのは初めてですけど、なんか物凄いものを感じました。」 ナカサテは本心で興奮冷め遣らぬ感じでそうまくし立てた。 しかし、反してシグナスは、 「私は、そうは思いませんでした。うまくは言えないのですが、見せかけというのが一番近い言葉にみえます。」
ドロシーもシグナスと同様の意見だった。 「見栄を張っている以外何も無いですよ。あれは。王の鎧がその証拠。あれは実践的じゃない。」 ドールとルクスもナカサテと同じ意見だった。 「しかし、王の見栄えが虚勢だとしても、あの統率された兵士は伊達じゃない。軍事国家というのは嘘ではないと言える。」
シグナスは、アルスの顔を見、意見を求めた。 「そうだな。俺の意見はシグナスと同じだ。だが、あいつらは、他国の者がザクトを軍事国家として見ているという事を理解している。故に、そう思わせようと躍起になる姿は見ていて面白い。偏見は偏見しか生まないという証明にもなったしな。」 「はい。」 「我らにはザクトが、軍事国家という先入観がある。あれを見て畏怖させる口実があるなら、相手としては実に有効的だ。 今回の外交において、力を誇示してもなんの意味も無い。 多くを語らずザクトを敵に廻す事は危険だと感じさせれば良いだけだ。 わざわざ外交において、鎧武者を立てる必要などどこにもない。 俺たちは戦いに来たわけではないからな。無用に力があると見せ付けるには、他に理由がある。」 「というと?」
「ノイエの王がザクトへの侵略を考えていると思っている人間がいるということだ。」 「まさか。」 「いるな。少なくとも一人。確実に。」 「王が無能でも、それを支えあまりある知者がいれば、どれだけでも覆す事は出来る。それがこの国にはいるということだ。」
「知者ですか。」 「ああ、そうだ。その男を抑えない限り、この国を統治させる事は難しいようだ。 こちらの思いを理解してくるものがいるというのは、実に面白い。 今からは、一語一句が重要になる。迂闊な事を言うなよ。」
今度は、大した時間もおかず使いのものが来て、宴の席に一行は招待された。 宴の場においても変わらず、面した者達は皆、完全武装し、鎮座していた。
アルス一行は、指定された席に招かれた。アルスも親衛隊と共に末席に座ると、同時に宴が始まった。
外交官代表であるジールが、グラップラードザーク王と共に酒を酌み交わし、何か会話をしているのが見えた。 アルスは、シグナスから注がれた酒を飲みながら周りの様子を注意深く見ていた。
宴の中央では、キレイな着物を着た数人の女がヒラヒラと舞い、その周りで楽器が奏でられていた。 女の舞いと武装した兵士とのギャップが著しく異様に感じられたが、それなりに盛り上がりを見せていた。
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