刃霧が町で一事件を起こしてから、数週間の時を経た頃、国全土を揺るがす大事件が起きた。 全国の集落にその事は通達され、それと共に、それに関わる有志が募られた。通達の内容はこうだった。
--時の大罪より国の年号を改め戦州とする 戦州の名の元、新しき国の国主 皇 帝(すめらぎ みかど)が、この国を統治することを全諸国に対し通達する。 この通達に応じ、呼応するものあれば、国主は絶対なる力をもって、擁護する。 反する道を取るならば、皇の名の元、全力を持ち、そこを滅する。この文書は、通達ではなく勧告である。
すでに、水面下でも皇の力に接したものは、この勧告に対し、従順であった。皇は己の財力と力を持って、 力あるもの達の反抗を事前に食い止め、そして潰してきたのである。 全てを余儀なくされ、従う道しか取れなくなったものもいたが、それでも統治されることは一概に悪いことではない。 治安が悪いことで盗賊や夜盗に悩まされていた村々にとって救いの手であることは確かだった。
-戦州都 「私の時代の幕開けだ。この力を持って、全てを成す。私の力の及ばぬ所などはこの世に存在しない。」 「皇様、おめでとうございます。」 「おめでとうございます。」 賛辞の言葉が、往々に皇を称えた。
皇は、戦州都にある大屋敷の高台の上で、両手を上げ、下に集まった村人達の前で高らかに宣言していた。 皇の後方には、参謀でもある零孔を従え、更に後方に4鬼神がずらりと肩を並べて立っていた。 皇は、下を見下ろし、村人達には聞こえない声で、 「愚民共、私を敬え、私の足元にも及ばぬものよ。貴様達の屍をどれだけ積み上げても私の元には届かぬ。 絶対なるものと思え。ふふふふ。」 皇は、冷たく嘲笑し、わき目も振らず、屋敷の屋内に入っていた。零孔も、4鬼神もそれに従った。
新たなる時代の幕開けであった。今後、時の流れが戻るわけではない。そんな確証などどこにも無いのだから。 しかし、これより後、時代は確かに変っていったと思える何かがあると思わずにはいられなかった。
この物語の主人公である刃霧は、この事態を全く知らなかった。知る由も無かった。 事実、村々の事情には、縁遠い深い山中で、出口を探していたのだから。 「やべぇぞ。完全に迷った。このままじゃ、野宿どころか死ぬかも。やばい。やべぇ。」
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