皇 帝が死んだという事実は全土に知る事となった。
当然、また時代は荒廃した。 元々皇の時代などは、にんじんをぶら下げられた馬のような時代であっただけで、 全ての民が平等に平和を手に入れた訳ではなかった。
皇の影に隠れて表に出れなかった野望家達は我こそはと天下を求めた。 時代は荒れた。多数の人が、天下の覇者を名乗り国を治めたが、しかし、どの人間が国を治めても時は動かなかった。
相変わらず時は止まったままだった。 幾人かの覇者という名のものが世を過ぎ去ったであろうか。それは、誰も知る事は無い。 結局のところ、民が本気で幸せと感じる事は無かった世が多かったのである。
そして、相変わらずの止まった時が過ぎ去った後、事件が起きた。そう、時が動き出した。
一人の覇者が天下を治めた。その覇者は、今までになしえなかった大業を果たした。 世に君臨し、全ての民にとって平和と名のある時代を起こした。 時がその者を認めた。時が動き出した。年を取り、老いを感じ生が誕生し始めた。
時が動き出した後も、刃霧の名は決して衰える事は無かった。 しかし、誰も刃霧を仲間に引き入れようと思うものも居なかった。
皇の件を知っていたのだ。権力者になろうと考えるものは、迂闊に刃霧には触れなかった。 皇と同じ道を歩みたくは無いと誰もが思ったからだ。
自分の道で自分の力で、権力を作り、時代を気づいて行った。 ここに、戦州という時代は終わりを告げ、新しい時代が始まった。
時を動かしたきっかけの覇者も時の流れの野望家の手によってたった2年という短い天下で命を潰えた。 その間も時の進行と共に新しい野望家が覇者と名乗り天下を治めたが、長い年月の安定をもたらせては居なかった。
そして、時は過ぎた。 一人の若者が天下に君臨した。 その若者は、類まれなる武才と、知略を備えていた。
その若者は、天下を手に入れ、覇者の住むべき館に立ち、民衆の前で叫んだ。 「時が動き出して、20年の月日が立った。時の管理者は何故、我々に時を与えたか。 再び、同じ過ちをしないため、今までの生き方を反省し、平和で、誰もが幸せと思う暮らしをと考えての事を、かみ締めねばならん。 わたしは、ここに誓う。 これより先、戦いを必要の無い時代を築く。
父より学びし、刀剣の技術、母より頂いた才。それを使い私は、この国の覇者となる。私は、刃霧が嫡子なり。」
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