皇は、椅子に凭れかかるようにうな垂れた。
刃霧が一歩を踏み出して歩こうとした瞬間、ばっと後ろを見るや否や、入鹿ごと押し倒すように横にとんだ。 入鹿は、なんの準備もしていなかったので、そのまま地面に倒れた。
刃霧は、刀と入鹿をうまく使い、地面に降り立ち、構えた。 刃霧が、先ほどまで居た地点に無数の細い棒状のナイフが地面に刺さった。
刃霧は、後ろを振り返ると、そこには、相変わらずの黒い衣装に身を纏い、片腕を無くした闇撫が立っていた。 「へへ、へへ。刃霧。お前は殺す。」
「お前か。そうだな。お前はまだ、殺していなかったな。皇よりも先に、冥府に送る必要があったな。」 刃霧は皇に背を向け、闇撫と対峙した。
闇撫は、半狂乱の状態だった。恐らく、先ほどまで民達に打ち込まれた薬を打っているようだった。 「刃霧。お前の血が見たい。お前の血が俺を一層楽しく興奮させる。お前を殺すのが俺の楽しみだ。」 「いいのか、皇様の御膳だぞ。無礼じゃないのか。」
「ははは。そんなこと俺の知ったことか。お前を殺す。他の奴らなど知るか。ひゃははは。」 歓喜の叫びと共に闇撫が向かってきた。飛び上がり、右腕の袖を振り下ろすと、袖の中から暗器が飛んできた。 刃霧は、それを交わし、横にとんだ。 「入鹿、間合いから外れろ。こいつは容赦が無い。飛び火したくなければ、安全な所まで離れていろ。」 「だが、・・・・わかった。」 そういい、入鹿は、刃霧と闇撫との戦いから少し離れた。
闇撫は、麻薬により精神が崩壊していた。 目に見えるものが敵そういったものも感じ取れた。
事実、戦いの最中、暗器の一つが、逃げ送れた零孔の胸に刺さり、血が飛び散った。 それを見るや獣じみた叫び声を上げ、興奮を表すとまるで犬が駆けるかのように3本の手足で床を駆け、
零孔の胸の上に飛び掛ると、持っていたナイフで零孔の体を何度も突き刺した。 最初、助けを請うていた零孔だったが、徐々に声は失われ、何も発することの無い遺体となった。
だが、闇撫はそれでも突き刺す事を辞めなかった。
入鹿がその様子を口を押さえながら、 「ひでぇ。仲間を殺しやがった。命が尽きているのに、なんてむごい事を。」
刃霧は、地面に落ちた暗器を拾い上げ、闇撫に向かって投げた。闇撫は、向かってきた暗器を振り落とすと、何度も零孔の体に突き刺していた手を止め、刃霧を見た。 「いつまで、肉の塊の相手をしている。お前の相手は俺だ。」 闇撫は、狂った叫び声と共に、飛び上がり刃霧に向かって突っ込んできた。 刃霧は、刀を下に向けたまま、闇撫が降りてくるのを待っていた。
「ははぁん。」 と笑い、袖に隠した暗器を投げた。刃霧は、それを一寸の見切りで交わし、 「我流、風塵」 と言葉と共に、刀を上に振り上げた。闇撫は、刃霧の横を通り過ぎ、そのまま、勢い欲地面に転がった。
入鹿は、刃霧と闇撫を交互に見た。闇撫は、地面に倒れたときには既に、腰のあたりから、十字に4つに切れていた。 「なんだ、今のは、上に振り上げたように見えたが、4つに分かれて。。。。」 闇撫は、自分の体が切られたことが、半分解っていなかった。 「ははは、血だ。真っ赤な血だ。ひゃははは。刃霧ぃ。見ろ。血だ。」 刃霧は、冷たい目で、それを見、 「お前にはお似合いの光景だ。」 そういい、刀についた血を振り払い、闇撫に背を向けた。
入鹿を見るや、 「皇はどうした。」 「あん。あれ?どこに行った。」 「お前に聞いている。」 「悪い。知らない。」 「役に立たない奴だな。行くぞ。」
「悪かったな。。。。いや、ちょっと休んだらどうだ。戦いすぎた。体を酷使しすぎだろう。」 「全てが終わったら、休むさ。今は進むだけだ。」 「。。。。。わかった」
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