「さて、何用かな?」 「知れた事。ザベル様をどうするつもりか。」
「これはしたり、王への反逆は誰であろうが死罪。それはこの国の古来からの法律。 それを今更母君が尋ねなさる。おかしな事を言いますね。」
「しかし、ザベル様はこれまでにあなたの父君であられる前王の補佐をなされてきた。 確かに前王は、あなたの言うように、少し知勇が足りなかったのかもしれない。 決断の必要な時に変な甘さを残し、それが返って不幸な結果になろうとした。 しかし、ザベル様は、その都度、自らが泥を被り、ご判断をなされてきた。 今のノイエがこうしてあるのもザベル様があってのこと。 あなたが、それを知らぬのも致し方ないこと。しかし、ザベル様の行き過ぎた行為は前王に代わり、私がお詫びし、その上で、ご判断を賜りたくお願い奉ります。」
「ほう。それほどまでにザベルを庇うとは、尊き愛ですなぁ。さて、宰相。そなたはどう思う。そなたの意見を聞こうか。」
キーヴは、アルスに一礼した後、 「そうですね。ライラ皇后の意見を聞き入れたとしても王への反逆を目論だものに慈悲をかけるは無意味。 罪は罪として、裁く必要があると考えます。」
「だまらっしゃい。叔父上であるザベル様を兄弟2人で、そのような不埒な事をよくもいえますね。 キーヴ、あなたは、黙っていなさい。」
「キーヴは、宰相です。この国の今後を真っ先に考える有能な私の補佐官。 この場には、兄と弟という世界はありません。 叔父上である前に1人の罪人として宰相は、判断している。しかし、おかしいですね。 何故、ライラ皇后は、そうまでして、かの者をお庇いなさる。」
「!」
「私には、少々理解できかねる。 何故、母上は、王への大逆を企てた反逆者を庇い、実の息子でもある私の味方をしないのか? 王権は、今、息子である私の元にある。それを無視して、反逆者であるザベルの味方をするのは何故? 是非、その真意を聞きたいものです。」
「んぐ」 ライラは口を噤んだまま何も語らなかった。
「黙して語らずですか。まぁ、いいでしょう。 時に、せっかく、母上殿や、デミトリが、こうして参内してくれたのです。 いつまでもつまらぬ話ばかりでなく面白い話の一つもしませんか。」
アルスの言葉に、ライラは疑問を露にした。 アルスは、特に変わることのない顔色で、 「そうですね。題して、「オルバス王の死の真相」なんていうのはどうですか?」
その言葉に、ライラは、体を硬直させ、軽く震えるのが見て取れた。 キーヴもデミトリも、驚いた顔でアルスを見た。
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