アルスは自室で正装を脱ぎながらそばに控えていたシグナスに、 「さて、稼いだ時間は十分だろう。怒りの矛先を私に向けさせねばな。ううん、そうだな。牢に入ったものはしばらく外気に触れてはいないな。そうだ。たまには、散歩の一つもさせてやろう。シグナス、ルクスたちを連れて、牢獄に入れられている者達を城の中で散歩をさせてやれ。なるべく人の目につくようにな。そして、少々ふざけた事をしてやるんだ。鞭の一つも放ってやれ。」 「は。」 そう言うと、シグナスは、扉を開け部屋を出た。部屋の外で待っていた新親衛隊の面々に王の意向を伝え、すぐさま、準備に取り掛かった。
アルスが、庭園を見ると、先ほどの言葉どおり、シグナス達が牢につながれた罪人たちを庭で散歩させていた。 そこには、罪人たちに混じって、ザベル達も歩いていた。 「良い演出だ。」 アルスが、そう言いながら、笑っていると、
早速、皇后であるライラ、そして、デミトリがアルスの目の前に現れた。 「アルス王、あれはなんですか?」 「あれとは?」 「あの行為です。」 そう言い、庭園を歩く罪人たちを指差した。
「何、牢に篭りっきりでは、辛かろうと、散歩をさせています。」 「あなたには、王族としての意識はないのですか。 例え、王に大罪をしたものだとしても、王族として生きてきた大恩あるザベル様をあのように、 他の罪人と同じに扱うとは、戯れにも程があります。」
「私にとっては、皆同じと判断していますよ。罪人は罪人。何の違いがありましょうか。」 「そのことで、話があります。」
「いいですよ。さぁ、どうぞ。」 「ここで?」
「はいはい。わかりました。では、こちらにどうぞ。」
そういい、2人を促すようにして、玉座の間に入った。
アルスは、椅子に腰掛け、2人を見た。 デミトリは相変わらず怯えた目で王を見ていた。ライラ皇后が口を開こうとすると、
「ああ、ここにいらっしゃいましたか。アルス王。」 「キーヴ、どうした。」
「はっ。罪人たちの散歩が終わったようです。」
「その報告にわざわざ、宰相が?」
「シグナス親衛隊長からのご指示で、陛下にご報告を。」 「ふふん。それはご苦労だったな。今、皇后殿と、デミトリ皇子が参っている。」
「これは。お久しぶりです。兄上。お元気そうですね。」 キーヴは笑みを交えながらデミトリを見て軽くお辞儀をした。 そんなキーヴを見たデミトリは、 「キーヴが宰相? シグナスといえば、アルス王の側に仕えていた奴隷。あの男が親衛隊の隊長だと。いつの間に?何故?」 声にならないぼやきを言わずにはおれず。そして、激しく動揺した。
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