一途の不安を感じていた諸侯達の前に扉が開かれ、王が現れた。 一同平伏を忘れ、一斉に開けられた扉を見た。 正装に身を包んだ。アルス王が立っていた。 アルスはそのままシズシズと、玉座まで足をすすめ、玉座に一礼をし、腰をおろした。
諸侯たちは、何事かと言った顔つきで、アルスを見た。アルスは、平然とした顔もちで、 「変か?私のこの姿は?」 「どうされたのか。陛下。」 「恩賞を出すのは初めてだからな。王として皆に礼を尽くさねばと思ってな。 初めてこのような格好をして見たが。どうにも動きづらい。お前達には悪いが、この格好は、今回で止めさせてもらう。」 「なぜ、また。陛下だけ、そのような。」 「礼を尽くすと言ったはずだ。それだけだ。さて、恩賞の儀執り行う。 まず、第一功 ザベルとの開戦を誰よりも早く伝え、敵地への潜入、および内偵での策の実施。果ては、扇動と功をあげればキリがない。今回の功績。まごとに見事なり。暗部よ。貴君等に、第一功を授ける。」 アルスの声に、諸侯たちは、歓喜の声を上げた。暗部は、驚き、唖然としてた。 「暗部よ。前に。恩賞を授ける受け取りにくるんだ。」 暗部の代表が、平伏したまま。 「恐れ多い事です。我らは、王に拾われ、王の指示通りに動いただけのこと。 我らに恩賞は必要ありません。お言葉のみでご容赦ください。」 「だめだ。貰うものはきっちり貰っておけ。要らないといっても強引に送りつける。 受け取りに来るんだ。」 イオや、他の将軍達が立ち上がり、暗部達の手を招いて前に押しやった。 「貴公らには、金500、それ以外に受け取って欲しいものがある。シグナス。」 アルスの声に、シグナスは、暗部達の前に、盆を置いた。そして、盆の上に置いてあった布を広げた。布は、黒字に、金の飾りが回りに刺繍され、真中には漢字で「風」の文字が縫られていた。当然こちらの言葉ではない。 「それは、俺が向こうの世界にいたときの文字だ。かぜと読む。俺はその文字と、その言葉が結構好きでな。風は。目には見えないが確実に感じる事ができる。情報という貴重な知識を風にのって流す。どれだけ高い壁に遮られていようと、隙間をぬって風は必ず通る。とても不思議でそして素敵な大気現象だ。貴君らには、これより、風の隊として、今まで同様役目を全うして欲しい。それは、貴君等の旗印だ。 戦が合った際には、私の陣で、その旗をひらめかせて欲しい。よいか。」 暗部達は、旗を見、感極まる声で、平伏した。王は、満足げな顔をした後、 「次、第2功・・・・・ と順番に、今回の戦に加わったもの、功績をあげたもの、その場にいるもの全員に、果ては侍女にまで、恩賞を分け与えた。 「さて、次はシグナス。お前にも恩賞を与える。」 「!」 「シグナスに恩賞を与えるにあたり、キーヴ、貴様の親衛隊の任は今日をもって解任する。そして、現親衛隊隊員も全て解任し、元の場所に戻れ。貴様らの今後は後でいう。 親衛隊は、シグナスに与える。親衛隊隊長だ。新しく親衛隊として、下記のものを隊に入隊させる。 シグナスを隊長と仰ぎ、忠誠を誓え、ルクス、ドール、ナカサテ、ドロシー貴様等は今日より親衛隊だ。よいな。」 ルクス以下、3人は、今回、一兵卒でありながら、ザベルとの戦のおり、アルスの命令で、殆ど一つの場所にとどまることなく、四方八方走り回っていたもの達だった。 将軍クラスの者達は、この4人の誰か1人は、どこかしら見ていたので、名前を聞いた時は、なるほどと思った。 とはいえ、この4人にとっては大出世であることは誰の目にも明確だった。
「一軍と呼ぶには、少々人数が少ないが、キーヴの時とは少しばかり事情が違う。 シグナス、今以上の身辺警護を頼むぞ。 それから、親衛隊の者達は、つい昨日までは一兵卒だった者達ばかりだ。親衛隊として出世をした思うのは勝手だが、給金は、対して変わらんぞ。」 その言葉に、4人は、嬉しさと残念さの両方の表情で頭を垂れた。
「軍の再編に関しては、イオより詳細は伝えさせるが、これよりの編隊に関しては、1師団を一つの隊とする。 1師団は1万の兵。万を司る隊長を万兵長。万の兵は千の兵によって分けられ、千の兵を司るは、千兵長、同じ要領で百兵長といる形とする。 第一師団 万兵長をラシード 千兵長は、先に親衛隊だった者達となるわけだ。後のことは、イオから伝える。」
絶え間なく話し続け、疲れたのか一心地つかせた。そして少し姿勢を直した後、 「最後に、キーヴ。先程、親衛隊の任を解いたお前に、新しき役付けを与える。今日から宰相になれ。それがお前の新しい役目だ。」 その言葉に、キーヴは、ただただ驚いた。思わずその場に伏し、 「身に余る光栄。役目に恥じぬよう粉骨砕身頑張る所存にございます。」
アルスは、それを見た後、 「それから、今日までに働いてくれた一兵卒達に伝えよ。いまから、4日間の休養を与える。少し体を休め、栄喜を養え。それから、旅籠には、酒を用意してある。一人2樽までは、好きに飲んでよい。飯代は自腹だがな。骨休めをしっかりしろ。4日後からまた、大きな仕事が待っている。以上だ。」 そういい、アルスは、重い正装をめくりあげ、それでも少しヨタヨタしながらその場を後にした。
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