”ガラガラガラガッシャーン”、”ドーン”
派手に何かが壊れる音が盛大に聞こえた。 街の一角で、建物が崩れた音だった。 さっきまで人が生活していたと思われるにも関わらず、 遠慮も情けも無く屈強な体をした男達が、手に獲物を持ち、家を崩していった。
崩れていく家を見て、叫ぶ大人たち。訳も解らず泣きじゃくる子供。 それは、一軒、二軒という話ではなかった。街道沿いに並ぶ家々を容赦なく崩していった。
家が崩れ、 瓦礫の山とかした家の壁やら屋根を、多くの人が運んでいく。 傍には、手には、鞭を持った鎧で武装した男が、大声で指示をする。
多くの人馬が借り出され、休み無く働かされていた。
朝な夕なに働かされ、瓦礫が取り除かれ、最初から何も無かったかのように更地にされた。 更地になれば、今度は測量が始まる。測量を元に、道や水路を作りはじめる。 そして、新たに建造物を建てるべく多くの木材が運び込まれる。
ノイエの首都と呼ばれるこの都の一角で、起きた取り壊しは徐々に、都全土に及びつつあった。
取り壊しだけではなかった。ノイエの中枢にあるカオス峠を始めとした連なる山々のきり屑しが行われた。 多くの人手を使い、山を2つ3つ崩す作業が始まった。
唐突に起きたこの出来事は国中の人をも巻き込む大事だった。 戸惑いを見せる国民。
何の兆しも無く始まったこの出来事に、国中の人間が借り出された。 都では、家々が取り壊され、国の中央深くでは山の切り崩しという理解できない事に、 国民の不安は徐々に募り始めていた。
国民の不安が高まるのに比例して、王宮内でも時折、王と官僚とが互いに口論する姿が見られた。
「いいかげんになされよ。王よ。このような強引なことをなさってなんとする。 我々はただの一度も今回の件、賛同したわけでは無い。 にもかかわらず勝手に物事を進めるとは。国民がせっかくの幸せを得たというのに、 あなたはそれを潰すというのか。」
「黙れ、何度同じ事を言えば納得するのだ。これは、民にとって幸せを得る行為だ。」
「何を言っているのです。これらの全ての行動は、今までの我らの苦労を無に返しているのと同じこと。 ましてや、民に労働を強制するなどあるべき事ではない。 これまでの歴史に泥を塗る行為だと思わぬのですか?」
「泥?泥だと。そんなこと知った事か。」
「民を傘にきれば、なんでも良いと考えているのか? そのような暴虐をいつまでも黙って聞いているナッシュと思うたか。」
「あきれて、モノも言えぬ。もう少し優秀なるモノかと思ったが、所詮貴様も人の子だな。」
「ナニィ。下の毛も生え揃わぬ子供が、誰にモノを言っている。」
そんな口論が時間も惜しむ事も無く続いた。 最後には、アルスが、激昂して、部屋から出て行く事で、事が終わる。
王宮の中でさえ、不協和音に包まれてはいたが、王の命令は絶対である。
どれだけの諌めが入ろうとも、アルスは命令を却下することなく街の破壊を推し進めていた。
|
|