アルスは、主だった諸侯たちを集め、作戦の大まかな話と指揮系統を指示した。 「私はこの儀後、本陣に向かう。イオを含め、こちらの軍部のモノは先行している。」 「陛下。ザベル達は来ますか?」 「間違いなくくるだろう。もしかすれば、私が到着する前に一戦ぐらいしているかもしれぬ。」
「それほど。」 「なるべく、こちらの領地にいれるつもりは無い。無法にしていた地帯で勝負を終わらせる。出来ることならば、奴らが城に帰るまでに勝負を付けたいのだが、おそらく予定通りにはならないだろう。
キーヴ、私が出兵後、お前には、留守居役を任せる。留守の間、代役の王を勤めよ。 近衛兵、親衛隊の他に2個師団を残しておく。」
「恐れながら陛下。何故私は、出兵に不参加なのでしょうか?」 「不参加なのではない。城の守りをお前に任すと言っているのだ。」
「守り?」 「そうだ。前にも言ったはずだ。今回は内と外にいる。 戦場が広大な大地か、囲まれた敷地の中かの違いだだけだ。 戦場という意味では同じだ。キーヴ、今回のお前の戦場。 お前にとっては危険極まりない場所にあたる。以前お前が自ら言った一緒に過ごした年数だけ愛着のある奴らの行動をどう見て、どう判断するかをお前には選んでもらう。 覚悟がなければ、死ぬぞ。気をつけるのだな。」 「身内だとはいえ、敵と認識し、甘さを棄てよと。」
「そうだ。」 「了解しました。」 「気休めになるかは分からぬが、ここは、あの城が完成すれば、壊す場所だ。何をしてくれてもいい。いっその事、燃やしてしまうか。」 「陛下。」
「冗談だ。主だった女中は、少しずつでも新城に移動を始めるように指示せよ。 侍女長、手配はお前に任せる。先も言ったようにここは戦場になる。下手な被害を蒙るなよ。」 「はい。」 「近衛兵長、ルクスだけ貸してもらう。いいか。」 「はっ、ルクスだけでよろしいのですか?なんなら、選りすぐりの精鋭を手配しますが。」 「よい。ルクスだけで十分だ。その精鋭はキーヴにでも使わせろ。」 「は。」 「では手筈どおりに。」 アルスの声と共に官僚達が一斉に返事をし、頭を垂れた。
「ナッシュとベルテにも伝えておけ、自宅業務は既に終了した。 城に戻り、キーヴの采配を待てとな。ただし、自分の危険を悟ったら遠慮なく逃げろ。逃げる事は恥ではない。お前達の頭脳は、1個師団も勝るぐらいの実力だ。頭脳が無くなることは王政の妨げになる。いいな。きっちり伝えておけ。」 キーヴ達は、了解した事を告げた。
会議を終了し、アルスは、そのまま部屋を後にした。自室に一度戻り、身支度を整えていると、ドアのノックする音が聞こえた。支度の手を止め、入るように命ずると、フェリシスが1人部屋に入ってきた。 「どうした、フェリシス殿?」 「ご出立と聞き、ご挨拶をと。」 「ふん、貴君の息子は残る。補佐をしてやってくれ。」 「はい。陛下に一つだけ聞いておきたい事が。」 「何だ。」 「ザベル公は、央国の力を借り、戦に望む御つもり、それは、つまり央国の兵器を用いるという事。てっきり、篭城かと思いましたが、打って出るには理由が?」 「おびき出すつもりなのだろう。イオに寝返りの算段を呼びかけていた。挟撃して、我らの逃げ道を塞ぐつもりなのだろう。 それに、民が自分達の味方をして援護をしてくれていると思っているのか。」 「参考までに、お聞かせ願いたい。央国の兵器は何ですか?」 「好奇心の強い事だな。」 「性分なのでしょう。私の。」 「イオを含め,誰も聞かなかったのに。全くフェリシス殿を、戦場に迎え入れたいぐらいだ。」 「許可さえいただければ、行きますが。」 「ははは。無茶を言う。あいつらの最終兵器は恐らく、大砲。 もしくは砲筒と呼んでもいい。」
「大砲?何ですかそれは。」 「普通の反応だな。まぁ、この国にはあるべき存在ではないということを印象付けている発言だな。」 「あの、それが兵器だと。」 「ああ、間違いなくそうだろう。大砲というのは、まぁ、簡単に言えば、使い方によっては、一度に何百、何千という人間をいとも簡単に殺せるしろものだ。まして、神様って奴を信じる存在が多いこの世界だ。神の鉄槌がくだったと勘違いをしてもおかしくはない。」 「あの、わからないのですが。」
「そうか。まぁ、使い方を知っていれば脅威だが、奴らの作戦に乗るほど愚かになるつもりはない。先を見て行動すれば、臆する事は無いということだ。」 「はい。では、勝利を願い。」 「ありがとう。」 アルスは、そう言うと、フェリシスその場に残し、部屋を出た。
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