イオは、それから4日間、上半身裸にされ、鎖につながれた。 その間に、王に知られないように様子を見に来る訪問者が数人イオの前に訪れた。
その中の1人に、 「イオ殿、お加減はいかがですか?」 「あなたは?」 「ザベル公の使者です。あなたのご意見を確認したいとこうしてまかりこしました。」 「私の意見?」
「ザベル様は、王への反逆をお企てています。 これ以上の暴虐は、誰もが望む事ではありません。 しかし、アルスは王である以上、そう簡単に首を取らせることは無い。
ご安心を。ザベル様には大儀があります。 そして、イオ殿がザベル様への忠義を誓うならば、今迄の地位をお約束しあなたを大将軍として向かえる用意があります。」 「私をそこまで買っていただけるのか。」 「無論。」
「ありがたい。今日にでもクビを撥ねられるかもしれない私をそこまで買っていただけるとは、ありがたいことだ。」 「それは、了承の合図とお受けいたします。」 そう言うと、使者は、ひそひそと何か伝言を伝えると、その場を後にした。
牢獄の扉がしまり、一人の門番が入ってきた。イオはうな垂れたまま門番の足音が通り過ぎるのを待っていた。
門番は、イオの牢屋の前で立ち止まると、 「思わぬ情報が舞い込んできたな。」 門番は、イオに向けて声を放った。 聞き覚えのある声に、イオは、ハッと顔上げると門番の格好をしたアルスが眼前に立っていた。 「陛下!!何で?というよりも、また、なんと言うお姿を。」 「例え、兜で頭を隠しているとは言え、私の顔すら気づかないとは。 私の知名度もまだまだだ。とはいえ、知名度の低さのお陰で、こうして、情報の一つが手に入ったからヨシとするか。」
「なんという事を。いつからですか。」 「4日ほど前からか。」 「それでは私が牢獄に入ってから。毎日。1日中ですか。」 「まさか。親衛隊とシグナスと交代制で。まさか、私の当番に、使いが来るとは思っていなかったが。」 「何をやっていらっしゃるのか。」
「問題あるまい。追放という下地ならば本人を探すのは至難だが、牢屋にいると分かれば、情報など回しやすい。まして、お前は全軍を預かる大将だ。 向こうの狙いとしたら、強い兵は一人でも欲しい。まして、軍を預かる対象となれば、万の兵を手に入れたのと同様だ。嬉しさも一塩なのではないか?」
「なるほど。使者の伝言お聞きしますか?」 「ん?聞く必要は無い。さしづめ、ザベル達が進撃している間に、手引きしている内通者が、お前の牢屋の鍵を持ってくるから、解放と同時に城を攻める。。ぐらいだろう?」 「・・・・・・、はい。」
「内通者が何者か?正確に知る必要はあるが、それよりも、先に軍の配備だ。 進撃してくる奴らを迎え撃つ。」
「はっ!」 「何時まで鎖に繋がれているフリをしている。さっさと行動に移れ。」 そういい、牢獄を後にしようとすると、何かを思いついたように、足を止め、後ろを振り返り、イオを改め見、何かを牢の中に投げ入れた。イオは、すでに、両腕の鎖を解き放ち腕をなでていた。 どうやら1人でも簡単に解けるよう鎖を繋がれていただけだったようだ。
イオはアルスが投げ入れた袋を手にとり、中を見た。 「先ほどの使者が、俺に渡した金貨だ。口止め料ってヤツだな。 俺には、不要なものだ。くれてやる。それで美味いものでも食え。 牢獄の飯はまずかっただろ。」
「は。罪人の気持ちがわかりました。」 「馬鹿いえ、罪人の気持ちなどわかる必要はない。」
「?」
「罪を犯したものは、裁かれて当然。俺には罪を犯す気持ちすらわからん。 くだらん野心を持つ時間があるなら国を憂う案の一つも考えた方が100倍ましだ。 くだらん事をいうな。」 「はっ。」
アルスは、そのまま牢を後にした。イオも続けて牢をから出て行った。
イオは、いつでも出撃できるよう戦の準備は常に怠らなかったので、出撃の合図をするや否や隊の将軍達は速やかに行動し、静かにその日の夜中に5個隊を率い、城下を後にした。
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