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作品名:ノイエの風に吹かれて 作者:xin

第15回   第01幕 第14章-[口論]
次の日、今までに無い口論が玉座の間で繰り広げられた。

「いつまで、王はあのような無体な事を民にやらせているつもりか。」

「黙れ。お前のくだらん能弁など聞き飽きた。今の状況を変えるつもりは無い。
何度も同じ事を言うな。」

「何をおっしゃる。今までの苦労を無きものにし、挙句の果てには、今までに貯めた資金をゼロにするような行為。まだある今日に至るまでの民の暴動。
民のためにあれと言っていた王とは思えぬ無様ぶりだ。
不信が最高潮に達しているというのに、今だその態度改めることが無い。
一体、この国をどうしようと言うのだ。」

「私の考えは、何度と無く話した。にも関わらずそれを理解せず。挙句の果てに私に苦言を促すとは見下げた行為だ。
イノシシ武者とはお前の事を言うのだ。無い頭をどれだけ捻っても何も出ぬのならば、言われたことだけやっていろ。貴様にはお似合いだ。」

「例え王でも、今の発言は許されぬ。本気で言っているのか。王よ。」
「当たり前だ。」

「情けない。ナッシュ殿や、ベルテ殿も、何度と無く苦言を申し伝えたのに、彼らの功績を称えず挙句の果てには追放の下地。最近の王には従えぬと見限る諸侯も多い。それでも私は王に忠誠を誓った身。だからこそ代表してでも人に言えぬ苦言を申し上げ、誰よりも民を思う王に戻って欲しいと思っているのにも関わらず、そのようなお姿になられるとは。なんとも情けない限りだ。
こんなことなら前国王いや、ザベル公に王になられた方が100倍マシというものだ。」
アルスは、イオの言葉に激昴して、近くにあった湯飲みグラスをイオに向けて投げた。
湯飲みグラスはまともにイオの頭に当たり、その場で割れた。
イオの頭からは血が流れ落ちた。

アルスは、怒り口調で、
「貴様、本気で言っているのか。」
イオは、変わらずまっすぐな視線でアルスを見、
「無論!!」
と言う。アルスは、椅子から立ち上がり、イオを指差しながら、
「たわけが!!私への忠義を約束したものが今や反旗を翻すとはな。民の事を思う行動をしていると何度も申しているのにそれを理解するわけでなく挙句の果てには、ザベルをマシという。そのような馬鹿者に用はない。こいつは、追放では俺の気がすまん。捕らえろ。捕らえて牢屋にぶち込んでおけ。」

アルスは、冷たく言い放った。
王の命令に、側にいた近衛と親衛隊は、イオを捕らえた。

「服をひん剥き、鎖に繋いでおけ、見せしめだ。私への不忠義を働いたものだ。不忠義者に情けをかける必要は無い。時を見て、公開処刑を行う。いつでもできるように用意しておけ。」
側にいた官僚達は、声を出すことなく頭を垂れた。

アルスは、ふんっと冷たく笑うとその場を後にした。
残された官僚達は互いに顔を見合わせつつ、
「え、演技だよな?」
「たぶん、怖かった。本気で。」
「あれが、演技じゃなく本気だったら。」
互いに静かな声でひそひそと話した。

イオが牢獄に入ったことはその日中に城中に知れ渡った。

それだけではない。
その2,3日には国中に触れ渡り、王の暴虐が最高潮に達していたと誰もが思った。


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