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作品名:ノイエの風に吹かれて 作者:xin

第14回   第01幕 第13章-[隠玉]
アルスは、呆れた顔で、ザベルが出て行った扉を見続けていると、
その扉から、先ほどとは対照的に、極力足音を立てず三人の黒装束の男達が入ってきた。

この者達は、アルス直属の暗部である。
奴隷解放の折、ルドの民として生まれ変わり、村を与えられ民として生きていたが、
アルスに使えたいと州侯を通じて嘆願して来た者達をノイエ政権が、諜報部隊の役割として暗部として育て上げたのである。

諜報部隊は、情報の収集が主な役割だが、時には潜入や暗殺、護衛など裏で暗躍する者達であり、
常に危険と隣り合わせである。
当初、アルスは、この役割をルドの民に行わせることに大反対をしていたが、
「危険な役目だからとルドを遠ざけるは、ルドを軽視しているのは、王である。
王に忠誠を近い、命を捨ててでも忠義に従うと示している者こそ適任であり、ルドの民が自ら手をあげたのだから
その判断は汲むべきだ」と真っ向からキーヴは王の言葉を退けた。

アルスは、キーヴの言葉にこそ真理があるとその言葉を呑み、ルドの民は暗部として、徹底的に鍛えられ、
アルスにのみ命令が与えられる暗部として活動を始めたのである。

暗部である男達は、アルスの傍まで来ると、静かに腰を下ろし頭を下げた
アルスは、男達を見ると、
「首尾は上々か?」
と尋ねると、男達は、頭を下げたまま
「すでに、ザベル軍の配備は整いつつあります。いつでも攻める気にあるようです。」

「そうか。時に、央国の武器は?どうなっている?」
「何か運びまれている様子はありました。しかし、それが何かが分かりません。」
「形状とか、大きさとかお前達が目にした事を教えろ。」

その言葉に、男達は互いの顔を見合わせていた。一人の男が、
「恐れながら、一つ。こー筒状のもので、あ、いや、瓢箪といえばいいのでしょうか?
それがとても大きく。そしてとても重量感があり、両端にはそれを動かすための車輪が付いていまして、
何と表現してよいのか。。。。見たことも無いモノでして」
それを聞いたアルスは、凭れていた背を起き上がらせ、男達の顔を凝視した。

アルスは、近くにあった紙と筆を手に取ると、スラスラと絵を描き始めた。描き終わり、紙を男達に見せた。
「それは、こういう形状のモノか?」
それを見た男達は、驚いたような顔をし、アルスに向かって、
「その通りでございます。」
と答えた。

アルスは、自分の書いた紙を改めて見て、
「そうか。これが、央国の切り札か。なぜコレが存在する。
この国いや、この世界には存在しないものだと思っていた。だが。。。

央国が他への恐怖として捉えるべきものならば、古い文献にそれが載っていた筈だ。
多少の慎重さは必要だな。

しかし、奴らは打って出るという。これを持ってくるつもりか。
しかし、圧倒的に機動力に欠ける。誘い出して、一網打尽にでもするつもりか?
私ならば篭城に見せかけて、あれらを打ち込み、恐怖に打ち震えている所を追撃する。奴なら?」

しばらく、独り言のようにブツブツ言いながら考え事をしていたが、
一つ閃き、何事かを男達に伝え、3人を下げさせた。


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