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作品名:ノイエの風に吹かれて 作者:xin

第13回   第01幕 第12章-[対面]
それから更に、時だけが過ぎたある日の出来事である。
誰もいない部屋で、アルスが1人、椅子に腰掛け、天井を眺めていた。

前国王の弟ザベルが、なんの前触れも無くずかずかとアルスの前に現れた。

「見事な醜態ぶりだな。アルス王よ。最近では自分の忠臣であるナッシュたちにも見限られたと聞くが。」

「予定も無く来訪したかと思えば、何の前置きも無く言う言葉がそれか。
こことは真逆に位置しているのに、随分と情報が早いな。」

「私は、なんでも知っておきたい性分でね。それ見たことか。
私が何度も、諌め、正しき王としての政務を促しているにも関わらず、このような醜態を。
これでは、既に、修復不可能な所まで来ているようだ。
家臣に見捨てられた王に未来など無い。いさぎよく退陣し、後継者に受け継いだらどうだ?」

「全く諌められた覚えは無いが。それに、後継者?誰だ?それは。
俺は嫁も子もいない。後継などはいないと思うが?」

「決まっておろう。お前の弟、デミトリがいるではないか?」

「意外だな。てっきり、自分の名前を出すかと思ったぞ。後見人が王になる。分からない話ではないしな。」

「どうも、お前は勘違いをしているようだな。
私はあくまでも後見人という立場を崩したつもりは、最初から無い。
王が正しく先を見通し将来を築いてくれる事を望むのが、後見人の役目。
王位などに興味など無い。貴様に王の資質が無ければ、次に期待するのは後見人として当然のこと。」
「ほー。後見人のねー。それは、知らなかった。気づかなかったな、全く。はっ。」
アルスは、今気づいたかのように鼻で笑った。

「今日来たのは他でもない。央国より、書状が届いている。お前宛だ。」
そう言い、ザベルはアルスの傍に書状を投げ捨てた。アルスは、書状を拾い上げ、中身を見た。

手紙の中身は簡潔に書くと、
新王の即位以来、一度の央国への参内も無い。
偉大なる央国王への拝顔を行うこと、そして、前国王に仕えた貴族の再雇用と奴隷解放の撤回。
そして、税の見直し、王族の威光の復活。
暴虐の象徴とも言えるあの建設中の城の撤収。
城を建てるには央国への申請及び許可が必要な事などが、長々と連ねられていた。

アルスは、ある程度、読むと、書状をビリビリと破き、床にばら撒いた。
「ふん。馬鹿馬鹿しい。央国からの書状が叔父上に届いたことも訳がわからんが、こうも手前勝手な事をよくもほざく。
寝言は寝てほざけ。全く、話にならん。」

その言葉にザベルは、みるみると顔を赤くし、
「私への暴言は黙って耐えよう。しかし、央国への無礼な発言耐えられるものではない。
そのような無礼極まる態度を神々が許すものか。
正義の神 イズラエルの御霊の前でも、そのような暴言をいつまで吐くか?」

「イズラエル?何だ?それは?央国だの神だの頼るものが多くて大変だな?
誰の前であろうが、同じ事を言ってやる。寝言は寝てほざけ。俺がやるべきことは俺が決める。誰の許しも得ようとは思わない。その為の王だ。」

ザベルは、憤慨した顔持ちで、
「今に国は割れる。お前の暴虐がいつまでも通用すると思うな。天は我に味方している。」
そういい残し、入ってきた時よりも更に足音をでかくして部屋を去った。


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