すぐに主だった官僚たちが集まり、今後の行動計画とも呼べる対策会議が行われた。 王の発案したノイエの大改革への進行に関してである。
財務官の一人であるクロイドは、 「あれはまさに革命と言っても過言ではない、しかし問題はある。 金と人、そして時間どうやって効率よく捻出するか。」
「それには考えがあります。先回の用水路等の開発時にイオ様が用いられた方法。 あれを今回も行うべきです。あれで、十分すぎる価値を見出す事が出来ます。」
「それよりももっと大きな問題がある。」
「全く、あの革命を行うのに、国民一人一人の力を借りるのは必然だ。 そして、王への不信をあおらせる事こそが一番の問題。それを両方クリアするのは非常に問題だ。」 政務官の一人であるドワズは頭を唸らせた。
「それに関して案があります。」 ナッシュが一言そう言うと、誰もがナッシュに顔を向けた。
「私は、王への不信を煽る事に関しては反対です。無論、不信感を抱かせる事は必須です。 しかしそれはあくまでも建前としてです。つまり、全国民には、演技を行っていただく。」 「演技?」
「はい、先ほども、ドワズ殿が申したように、国民一人一人の力は今回において必須です。 強制されて否応無しにやるのではなく国民たちが理解して物事に取り組む方が、 時間も短縮され、経費の面でも圧倒的に安く済む。」
「しかし、それでは国民に王への不信を抱かせるのは不可能。」 「はい、だから演技をしてもらいます。 これから先、主だった町の責任者及び州候を招き、区画整理から建物の取り壊し、 その後に起こるこれからの内情などを説明し、それをまた、村人一人一人に伝えます。 国民全ての人間に理解してもらうのです。 しかしその中で一つだけ約束してもらう。それは王への不信を抱く事。」
「は?」
「矛盾してませんか?全てを理解するという事は王の考えを理解するという事。 有利な話はあれども不利はないのが今回の件。 全てを理解し、それをもって王へ不信を抱く事などありえない。」
「はい。だから演技です。うわべではこちらは強制という道をとる。 働きの悪いものには鞭の一つも与える。しかしそれは王の望むべき事ではない。 しかし、ただ不信に思えというのも矛盾がある。全てを理解した上で、強行手段をとる。
知らずに無茶をすることと知った上で無茶をさせることでは、心構えが変わる。 傍目でみれば、知らずに無茶をしていると見える。後は演技でカバーする。」
「なんと、大胆な事を。」
「これは、王の無茶を少し真似てみました。」 「だが、うまくすれば、不信は一発で取り除ける。いや、元々無いのだから何の問題も無い。」
「はい、私は王への不信はあるべき姿で無いと考えています。 国民を思っての行為に対し裏切りで返す事は望みません。 不信は暴動に繋がる。
ここでもし死者の1人も出せば王は悲しむ。しかし演技の暴動なら人が死ぬ事はありえない。」
「なるほど。では早速、王に進言を。」
「いえ、これは王も騙すのです。」 「なんと。」 「是を王が知れば、反対するに決まっています。無茶をさせるなと。 ですから、事が完全に見えるまで王にも騙されてもらいます。」
「ナッシュ殿もお人が悪い。」 「いえ、最良の策かと。」
「よし、では早速、主だった進行を考えていこう。区画整理の役目は拙者が引き受ける。」 「いえ、イオ殿は今回この件から離れていただきます。」
「何故?」 「これらの最終目論見はザベル公いえ、ザベルを引っ張り出す事が目的。 いつ戦いになるか解らないのが今回の不安要素です。
いつ起きてもすぐに行動できるよう戦いに備えるのは必然。 ですからイオ殿は今回の件には補佐として、裏からこちらから用意する人員を指南していただく。」
「ちと寂しいですな。」 「仕方がありません。」 「解り申した。しかし、州候たちへの説明には拙が家をお使いください。」 「快く。」
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