アルスは、椅子に座りなおし、
「最初は、酷いものに見えてもそれが、結果として大いなる実成すような形にするのが、好ましい。 そして、事が大きければ大きいほど誰の目にも見え分かりやすい事実を生み出す。」
一息にその言葉を言い、周りをゆっくりと見渡した。 誰もがその言葉には同意し、アルスを真っ直ぐに目で捉えた。
「それを成す方法を一つ持っている。 これは、事実上かなり大事だ。 やりようによっては、不信感は取れる。 だが、国一つ変える程の大事だ。」
「?」 今度は反して、酷く抽象的な物言いに疑問に包まれたが言葉を途切れさせる事も無く黙って次の言葉を待った。
「国を再構築する。」
アルスの力強い言葉に、カンタンな言葉にも関わらず一同が唖然とする雰囲気に包まれた。
「今までにイオたちが行った事は全てゼロに戻す。
元々アレは、財政が整うまでの暫定処置と考えていた。 整った今、王宮そのものも位置を変え、全て作り変える。膨大な人と金をかけてな。」
「そんなこと・・・・出来るのですか?」
「出来る出来ないの話はしていない。やるやらないの話をしている。 そして、俺は、やるつもりでいる。一番重要なことは、金と人をかけているように見せて行うことだ。」
「なぜ、今になりそのようなことを。」 財務を扱うベルテは、当然のような疑問を露にした。
アルスは、先ほどまでの力強い語句から一転して溜息交じりとも思える声で、 「俺は、常々疑問だった。何故ノイエの中心であるべきこの城が、こんな辺鄙なところに有るのかと。」
「辺鄙?」 「ノイエという国を地図で見た時、真っ先に疑問に思った事だ。 何故、国の中枢たるこの城が中央に無い。 こんな辺鄙な片隅にあるから、反対方向の片隅に邪魔な勢力を作る羽目になる。
こんな辺境にあっては、目の届かない領地が出来、王の言葉を無視して行動するものがいて当然。
国を束ねるものの城がここにあっては当然そうなる。 ザベルのような野心家を生み出すような形を作ったのは、当然の結果とすら思っている。
だから全てを作り変える。 それが結果的にはノイエという国を強くさせ、今まで以上の繁栄をもたらせる。シグナス!地図を持て。」
シグナスは、王の側を離れ、ノイエが一覧となって見える地図を持ってきた。
官僚達が集う場の前にその地図を広げた。 アルスは、椅子から腰を上げ、地図の前に座った。
周囲のものに近くによる事を示し、壮大で大きな計画を話し始めた。
ノイエという国の構造、城の位置から街づくり水路の建設地などを事細やかに話した。 街の作り、道のならびによって、人の行動が予測でき、それにより生み出される商業や工業の成果。
果ては隣国への道筋や戦においての防衛や攻防における地の利など
物流など予測の域を超えぬ所はあれども、官僚達を納得させられる程の情報がアルスよりもたらされた。 誰もがそれを熱心に聞き、誰もがそれに感嘆した。 心中では、いつのまにこれだけの情報を入手し、それを活かす策を考え身につけたかと誰もが驚いた。 一連の話を、時間をかけゆっくりと話し、数時間後に話を終え、一段落した。
「どうだ?これは、俺が本来、最初にやりたかった国づくりだ。 だが、いかんせん、財布の紐があまりにゆるく困難を極めていたのでやることは適わなかった。
しかし、今ならばこれが出来ると判断している。 無論、これを行えば、結果的には、今以上に国民の暮らしは豊かになる。
だが、見ようによっては、傲慢なる王の勝手な判断として不信感はあおる事は容易だ。 今までの下卑た歴史を持つこの城を捨て、新しい城を作り移動する。 そんな理由でも十分に傲慢さは得れるだろう。」
「しかし、それでは王自身無実の罪を被る事になります。それを良しとされるのですか。」 「何が問題か。結果としてノイエの国民が豊かになれば大した問題じゃない。 それに、これの目的は二つある。 一つは国づくり、そしてもう一つは、ザベルに口実を与えること。 無駄に時間をかけて、不信感を煽る必要はない。 不信感を煽る時間を与えながら、ついでに、国を作る。」
「しかし、・・・・」 「何を躊躇う。お前達がやるかやらないかだけだ。」
アルスの言葉に、部屋にいた諸侯たちが、 示し合わせていたかのように大きな声で、発した。 「やります。」と
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