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作品名:杏色の泉 −色彩の森シリーズ− 作者:xin

第3回   第03話 一日目・15:00
別荘に入り、各々荷物をおろす。
「これから、どうしようかー?」と話していると、孝仁が伸也を呼び止めた。
「少し話をしておきたいんだがいいかい?」
その言葉に、伸也は物怖じすることなく了解したことを告げ、
二人で書斎に入っていった。

入っていく様を見守る一同。扉が閉じると一斉に向き合い、
「うわぁ、これは、あれですか?」
「娘の彼氏に釘を刺すって奴ですかぁ?」
「娘とは、どこまでいってんだい?
まさか、結婚を考えているなんていうんじゃないだろうね。なんて」
「きゃははは。」
由里を囃し、興味深く書斎の声に注意していたが、ドア越しからは声が全く聞こえなかった。

書斎では、事務机のセットとソファが一セット置いてあった。
孝仁は、ソファに座ると伸也に招き、座るよう促した。

「私は、娘が幸せを得てくれるならば、交際相手にあれこれというつもりは無い。
それは、妻も同じだ。例え貧しい暮らしをしたとしても、娘が幸せだと言ってくれるならば、
私は、何もしないし、何も言わない。」
伸也は、黙ってそれを聞き、時折、声に出して返事をした。
孝仁は、少し言葉を置き、咳払いを一つした後、
「とはいえ、娘を持つ親であり、私の子供は由里だけだ。
何もしないとは言ったが、相手に興味を持つのは許して欲しい。」
そういい、テーブルの上に、分厚い封筒を一つ置いた。
「君の事を調べさせてもらった。どんな家庭環境で、どんな人間かをね。
結婚するわけでもないし、まだ付き合ったといっても手すら繋げていない状態だ。
そんな状態で時期尚早は、十分に理解している。だが。。。」
「親心ですからね。」
「そうだ、あっいや、うむ。その通りだ。」
「お眼鏡には適いましたか?」
「えっ、あ、うん、いや。。。海外生活が長いようだね。
海外の間の経歴は、履歴書に載る程度しかわからなかったよ。」
「そうですか。まぁ、その程度のモノしかありませんよ。」

●同時刻--別部屋では、伸也と孝仁以外のメンバーが一同に介し、雑談をしていた。
散歩しようとか、予定を考えていたのだが、伸也が、父に呼ばれたことで、
意味無く不安になり、由里は伸也が戻るまでココに残ると言い出した。
いつ終わるか解らない書斎の会話に、1人残すのも可哀想となり、
皆部屋で雑談をしていた。

話のテーマは、まさに、「由里の交際相手の謎を解く!」だった。
学校とクラスが同じな為、大介の話で口火を切った。
「それほど、多くを知っている訳ではないんだよね。そんなにお喋りな方でもないし。
皆も知っている通り、大学は卒業している。海外は、頭さえ良ければ飛び級で入れるしね。
実際、9歳で大学に入り、15歳で大学院を卒業しているらしいよ。
家族構成は、父・母・妹 親の職業は普通の外資系サラリーマンだっていってた。」
「妹いるんだ。」
「初めて知った。」
「あんな感じの妹なのかな?」
「性格は真逆だって言ってたよ。」
「それなら、仲良くなれそうだな。」
「ははは。」

「お金持ちは嫌いなのかな?」と由里が聞いてきた。
「なんで?」と奈津が尋ねると
「あまり、いい顔しないから。」
少しの不安げを残した言葉で呟くように言うと、大介はそれを否定するように、
「でも、本人もかなりの金持ちだよ。」
「うそ?」

「今の家、行った事ある?4LDKの超高級マンション。
親が用意したのかと思ってたら自分で買ったって言ってたし。」
「まじ?何でそんな金持っているんだよ。」
拓也は、合いの手とばかりに直ぐに反応する。

「昔、通訳のバイトでやってたんだけど、
大統領を筆頭にかなりな有名人の専属通訳の契約を結んでいたらしいよ。」
「なんで、そんな有名人が?」
「詳しくは解らないんだけど、元々、心理学が専攻だから相手との駆け引きにも強くって、
海外相手にするような話には、相手の心理状態なんかも一緒に話すから、結果的に交渉事も成功する事が多いみたいで、個人御指名の契約で通訳していたらしい。」
「すげぇ、冷静に、悪口言われそうだもん。」
「実際、大学卒業後、専属通訳の話を持ちかけられたって。
ちなみに、そのときの契約料金が、10億ドルだったけな?

それ以外にも、FBIから、プロファイリングチームへ参加して欲しいとの話もきていたらしいし、
日本は、警察や、検察庁からも何度か誘いがきているらしいよ。」
「うぇ。高収入な職場の誘いを受けながら、全部断って高校生やってんの?」
「勿体無い。」
「ちなみに、彼の今の夢は、喫茶店のマスターになることだけどね。」

「ええええぇ。」
「馬鹿じゃないの?」
「なんでぇ?」

「変わってる。」
「うん。」


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