現地到着する車 車から各々降りて、向かいの別荘を見上げる。 予想していたよりも遥かに大きい建物に、拓也も大介も驚く。
「どんだけ、金持ちなんだよ。」 「下流階級の庶民には、目に毒な建物だなぁ。」 そんな庶民代表の呟きを無視し、ユキや由里達も荷物と一緒に車から降りていた。 既に、別荘の中で待っていた奈津が、ドアの傍で座っていたが、 車のエンジン音に気づき外に出てきた。
「由里ちゃん。」 聞き覚えのある声に振り向くと、 長い黒髪を靡かせ、可愛いという言葉が良く似合う程均整のとれた顔をした女性が立っていた。
大介も思わず、「可愛い。。」と呟かずにはおられないほど、キレイな顔立ちだった。 奈津は、ペコリと頭を下げた後、 「おじさま、おばさま。お久しぶりです。 今日から数日間お世話になります。よろしくお願いします。」 と礼儀正しく頭を下げて挨拶した後、 直ぐに興味の視線は、同年代の拓也達に向いた。 目の輝きを増すように視線をこちらに向けると、 「こちらが由里ちゃんのお友達なんだ。メールで書いていた通りだね。 えっと。キレイで利発なカッコいい女性って事だったから貴方がユキさん。 元気でみんなのムードメーカー的な存在の拓也さん。 頭脳明晰で、いつも冷静で、大人な大介さん。 それと、由里ちゃんの彼氏の伸也さん。」 と事前に得た情報を復唱しながら、指差しそれぞれの人物を言い当てた。
「はは、当たってるよ。」 拓也が乾いた笑いを示しながら呟き、 奈津は、自慢気に笑うと、 「私、人を見る目には、自信があるんです。」 と笑い、皆に背を向け、別荘に向かってステップを踏むように走り出した。 別荘に到着する前に、ピタリと足を止め、くるりと振り返り、オズオズと静かに戻ってきた。
「あれ?戻ってきたぞ。」 「それもさっきとうって変わって静かに。」 「自己紹介を忘れたのではありませんか?」と答える伸也
ゆっくりとした歩調で、みなの前に立つと、 「ごめんなさい。皆さんの事で頭がいっぱいになってて、大事なこと忘れてました。 河北奈津です。よろしくお願いします。」 深々と頭を下げた。
「本当だ。」 「よく解ったな?伸也。」 驚いた拓也達から、事情を聞いた奈津は、 「なんで、解ったんですか?」と興味深く尋ねてきたが、 伸也は、 「なんとなく」と呟くように答え、別荘への足を進めた。
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