彼氏を作るそんな願いから催した合コン旅行。 結果的には、殺人事件に遭遇するというなんとも苦い思い出を作ってしまった河北由里は、 知らない人が集まると見えない悪意に襲われる。 そんな経験から、今回は自分の知人だけを集めて旅行に行くことに。
合コン旅行での経験は、悲惨な思い出ばかりでもなく、 助力してくれて、晴れて友人となった篠崎拓也と神谷大介。
より一層の深い友人となった榊原ユキ。 そして、あの事件から、付き合う?形になった安原伸也と共に、 由里の両親を付き添いに、父親の持つ別荘に招待した。
■ 第01話 出発 車は、別荘に向けて走り出す。 車の運転手は、由里の父親である河北孝仁。 助手席には、母親である郁美が座っていた。
孝仁は、未成年だけの旅行に烈火のごとく怒りを表した。 それもそのはず、未成年だけで旅行した結果、 殺人事件に巻き込まれ、 挙句の果てに、仕事用に買った別宅が血まみれの屋敷に変わってしまった。 さすがに、本人も気分が悪くなり、お祓いをした後、取り壊して島を売却した。
例え自分の知っている人しか集まらないと聞いても賛成する事もなく 会社を休んで、娘の為に付き添いを買って出た。 由里の父親は、仕事も大事だがそれ以上に家族を大事にする人だった。 特に一人娘でもある由里には、必要以上の愛情を注いでいる。 娘を持つ親ならば誰でもそうかもしれないが、 孝仁本人は、世界一愛情を注ぐ親だと自負するぐらいである。
8人乗りのキャンピングカーは別荘までの道をひた走る。 車中は、広々とした空間で、若い男女の声は、常ににぎやかな雰囲気を作っていた。 拓也の横には、ユキが、伸也の横には河北由里が座り、 彼らの向かいに大介が座っていた。
バックミラー越しに、娘の笑顔を見て、浅い溜息を付く孝仁。 女子高に通わせ極力異性を意識させないような生活が裏目に出たのか、 男友達を3人も作ってくるとは、夢にも思わなかった。 まして、彼氏が出来たと告白を受けた時には、 開いた口を塞ぐのにひどく時間がかかった。
大介は、少しむくれた顔で、 「なんか、納得いかないなぁ。」 ポツリと呟いた言葉は、拓也の耳にしっかりと届いた。 当然、拓也は無二の親友でもある大介の膨れた顔を見て言葉を返す。 「何が、納得いかないの?」 「だってさ。拓也にはユキがいて、伸也には、姫ちゃんがいる。 俺、今日は完全に、引き立て役だよな。」 見れば、男女1ペアが二つあり、 1人あぶれた大介は、なんとなくな身の置き場の無さを感じていた。 それを察したのか、1人モノのボヤキを言わずにはおられなかった。
その言葉を聞いてか、思い出したように由里が、その言葉の返事をした。 「ごめんなさい。言うのを忘れてました。現地合流で、1人女の子が来ます。 私の従妹なんですけど、奈津ちゃんっていいます。」 「従妹?」 「はい。年齢的には、私より一つ年下なんですけど、しっかりしていて可愛いですよ。」
その言葉に、拓也とユキは、歓声をあげた。 「良かったじゃないか。大介。」 「可愛いって。フフフ。」 大介も思わず、ニャッと笑ったがその笑みを隠すかのように一言強がりを言った。 「可愛いっていっても、女性が言う可愛いは、信用できないよなぁ。」 「どういう意味ですか?」 由里は、疑問を露にすると 「男が言う可愛さは、見た目で言う事が圧倒的だけど、 女性は、性格や行動を見て可愛いって言葉を使うらしいよ。 だから、男と女の意識が違うので、度々意見の食い違いが発生するらしいって何かの本で読んだけど。」 「えぇぇ。偏見だよね。それは。性格がイイっていいじゃん。」 ユキの反発に、由里が、 「大丈夫です。ホント見た目も可愛いですよ。 中学生の頃に、学校の中のミスコンで優勝していますから。」
その言葉を聞いて、伸也以外が驚いている。
伸也1人、首を傾げ、 「ミスコンとは、何ですか?」 「伸也君知らないの?英語なのに。」 「英語ですか。ミスコン。。。ふむ。言葉が思い当たらないですね。」 「コンテストだよ。ミス コンテスト可愛い女性を選ぶ大会で優勝してるんだって。」
「ほぅ。コンテストですか。なるほど。」 1人遅れて納得する伸也を差し置いて、不適な笑みを浮かべた拓也は、 「期待持てるんじゃないの?大介君。。」 意地の悪い笑顔を見せ大介の肩を小突く。 大介は、顔を横に向け、顔だけが問題じゃないよ。と強がった。
それを見て、一様に笑い声を上げてていた。
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