大介は、拓也が部屋から出て行くのを見て、黒男の方に振り返ると、 「君が、言ったことは解るよ。俺だって、警察に任せた方がいいと思っている。 でも、拓也の気持ちもわかるんだ。あーいう奴だから、深く考えて言ったわけじゃない。 友達を大事にしている奴なんだ。 出きるかどうかと言われたら解らないけど、俺は拓也の気持ちを優先したい。」
黒男は、大介をジッと視線を変えず見ていたが、突然笑い出した。 遺体の前でなんて不謹慎なと思える程、大きな笑い声だった。そんな笑い声も唐突にピタリと止めると 「オモシロイ。実にオモシロイ。拓也君は直情的で、感情的。 対して大介君は冷静沈着で思慮深い。なんとも対照的ですね。 対照的だからこそ親友になれるものですか。実に興味深い。 お2人の考えはわかりました。 この雪のお陰で、今日警察が来れる保障はありません。 差し支えなければ、お手伝いしますよ。」
「いいのかい?君には無関係な事だよ。」 「無関係だからこそ、冷静な意見が出来ます。感情に流されず物事を見極めるには大事かと。」 大介は、拓也が言うほど、冷たい奴ではないのではと思いつつ、 この奇妙で親切男の好意を素直に受け入れようと思った。 「ありがとう。。。。。ところで、君の名前は何て言うんですか?」
黒男は、軽く微笑み、 「いつまでも、黒男とは呼べませんよね。」 その声に、大介はあわてたように、 「知っていたんですか。参ったなぁ。呼び始めたのは拓也ですから。」 「別にかまいませんよ。僕の名前は、伸也です。安原伸也。」 「じゃあ、伸也君でいいですね?」 「ええ。では、どうしましょう?」
「どうするというと?」 「犯人を捜すということでしたので、まずは、状況を把握し、殺害の動機や、証拠などを探すのが順当な流れですね。そこから始めますか。」 「ああ、そうですね。」
「さて、殺された時間ですが、どうしましょう。医者とかいてくれればいいのですが。」 「医者ですか。。。。あ、亮介さんが医大生です。」 「医大生ですか。都合がいいですね。では、彼に頼みましょう。 ああ、ついでに拓也君も呼んできてください。」 「わかった。」
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