20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:純白の悪意 作者:xin

最終回   第12話 エピローグ
一晩を開け、警察がペンションに来た。
来た早々、俺は、警察に一部始終を話し、俺達の目の前で亮兄ぃの手に手錠が掛けられるのを見た。
そして、うな垂れたまま亮兄ぃは、パトカーに乗せられた

俺は、この旅行で、友達と兄貴を同時に失うという悲しい出来事があり、
そして、大介が伸也から聞いたと言う友達だからと言って全てを知るのは不可能という言葉が頭から消えなかった。


■ エピローグ
殺人事件から、1週間が過ぎた。俺は、まだ、あの日の出来事が忘れらないでいた。
なんか、心にポッカリと空いた穴を埋められずにいた。

学校の帰り道、家までの道をトボトボと歩いていると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。
聞きなれた声に、立ち止まり後ろを向くと、手を振りながら走ってくる大介の姿が見えた。
大介も学校帰りなのか制服を身にまとっていた。
近寄り、足を止め、肩で息をしながら、呼吸を整えていた。
「どうしたんだ?大介。というか、少しは、運動もした方がいいんじゃないのか。」
「はぁ、はぁ。考えとくよ。それよりも、驚く事があったんだ。」
「驚く事?」
「今日、学校でさ、転入生が入ってきたんだ。誰だと思う?」
「さぁ、誰って言われても想像も付かないよ。」

「伸也だよ。伸也。」
「伸也!?」
「やっと、彼が何者か、はっきりしたよ。」
「何?」
「あいつ、帰国子女なんだ。」
「へぇ。海外帰りかよ。すごいな。」

「驚くのはそこじゃないよ。
飛び級だったみたいでさ、ホントは、大学も既に卒業していて、心理学で博士号も取ってる。
犯罪心理学では、かなりの有名人らしいよ。」
「博士号?っていうか、大学卒業!?」

「ああ、いわゆる、超天才児って奴だよ。」
「ええぇ、大介よりも?」
「俺なんか、比較にならないよ。」
「なんで?」
「休み前にテストがあってさ、その発表が今日だったんだけど、不動の1位だった俺が今回は2位転落だよ。」
「まさか、1位って。。。」
「そう、伸也だよ。入学試験にテストの問題を使ったらしいんだけど、全教科全問正解。
文句なしの満点なんか取られたら身も蓋も無いよ。」

「すげぇな。でもなんで、大学卒業しているのに、わざわざまた高校入学しているんだよ。」

「この年齢は、日本では、高校に言っていないと世間的に白い目で見られると聞いていますからね。」
その声のする方向に俺と大介は、同時に向くと、軽く手をあげて、ニコリと笑いながら伸也が立っていた。
「伸也。」
俺は思わず、叫んでいた。
「こんにちは。久しぶりですね、拓也君。」

伸也は、歩を進め、俺たちの前で止まると
「家はこちらなんですね。僕の家と同じ方向なんですね。」
大介と顔を見合わせていたが、大介は、
「いくつか疑問があるんだけど、答えてくれる?」

「ええ、どうぞ。」
「亮介さんに検死をお願いしてたけど、伸也にだって出来たんじゃないのか?
静脈注射の事とか、踝に静脈があるとか、大学まで卒業してるんならそれぐらいの知識はあったんだろう。」
伸也は、肩を撫でおろすと
「正直いいますと出来ました。とはいえ、亮介さんではありませんが、僕も医学は素人です。実務経験はありませんし。
あの状況では少しでも確かな情報が欲しかったので、そういう人物がいてほしいと思ったんです。」

伸也の言葉に明らかに不服そうな顔をする大介だった。
「世間的に白い目で見られるっていったって大学卒業しているのに、また高校に行く意味あるのか?」
俺は、率直な疑問を伸也にぶつけてみた。伸也は、俺の言葉を聞いて少し気恥ずかしそうにすると

「恥ずかしい話ですが、同じ年齢の友達がいないんです。大学にいるときは、殆ど年上ばかりでしたし。
もしこれで、このまま社会にでてしまったら僕は、ずっと友達が出来ない気がして。
だから、回り道をしてでも、心を許せる人を作りたかったんです。」

「それで、県内必至の優等生学校に通うってことか。」
「実は。。。」
「実は?」

伸也は、先ほどまでの気恥ずかしさを更に上回るように挙動不審な態度をとっていたが、意を決したように俺と大介を正面から見据え
「ぼ、僕と友達になってください。」
そういうと、伸也は、手を差し出した。大介も意外な伸也の態度にどういう態度を取ればよいのか解らず俺の顔をずっと見ていた。

「ホントは、あの時別れ際にでも携帯電話の番号を交換をすべきだったのですが、なんかタイミングを失ってしまって、
家に帰った後、ひどく後悔しました。
友達になってほしいとの一言が言えない自分が非常に情けなく落ち込んで2,3日引き籠っていました。
その後、心を落ち着けるために散歩をしていましたら、本当に偶然なんですが、大介君の制服姿を見かけました。
すぐに後を追ったのですが、距離がありまして、追いつけませんでした。自分の体力の無さに更に落ち込みました。
いろいろと調べて、旭高校に通っている事を知りました。
そこに行けば、大介君にまた出会えるかもしれないし、大介君を通じて、拓也君にも出会えると思いました。

あの、失礼な行動を取ったことはお詫びします。ですが、僕はどうしても、お二人と友達になりたい。
あなた方二人は、とても、心地の良い性格の持ち主です。お互いがお互いを思い、助け合い、時に意見をぶつけながらも前に進もうとするお二人のような間柄にはなれないかもしれませんが、お二人に近づきたくお友達になってもらえませんか?」

伸也は、話している間もずっと手は差し出したままだった。
俺は、その差し出された手を強く握った。
「もし、街で見かけたのが俺だったら、3流高校に来てたのか?大介で良かったな。
よろしくな、伸也。でも、友達なんて自然になるもので、友達宣言する奴なんて初めてみたぜ。
俺は、もう当たり前のように友達だって思ってたぜ。」

俺の言葉に、伸也は初めて見せたと思えるほど満面な笑みを俺に向けてくれた。
失った人もいる。信頼していた人に裏切られた思いもある。だが、この笑みに救われたような気がした。
いつしか俺の開いた穴を埋めてくれたような気がした。


← 前の回  ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2728