結局、亮介は、犯行を認めた。大筋には、伸也が言ったとおりだった。 以前、友子の家庭教師を行っていたことがあり、そこで、彼女と知り合った。 教師と生徒の関係から、亮介が好意を持ち、友子に交際を求めた。 ほんの一時、付き合ったのだが、友子は以前から和彦の事が好きだった。
自分の思いを裏切れないと、亮介に別れを求め、別れた。 だが、亮介は、友子を忘れられない。 復縁を何度もせまったが、友子から返ってきた答えはいつも同じだった。 思いは膨らみ、徐々に、嫉妬や、恨みという感情に変わり、遂には、ストーカー行為に及んだ。 そして、いつしか好意は殺意に変わった。
その日の夜、亮介は、椅子に座らされ、手を縛られ、伸也によって監視されたまま一晩を過ごした。
伸也は、「和彦君に注意して、彼の心のケアをお願いします。」と言うので、 俺は、典弘達にも手伝ってもらい、和彦を1人にさせないよう労わった。
俺は、食堂で茶をすすりながら、目の前に座っていた大介と、ユキに話しかけた。 「なんか、とんでもない旅行になっちゃたな。まさか、こんな事になるなんて。」 大介は、浅いため息を一つついたあと、 「誰も予想していた訳じゃないよ。拓也だって、友子だって、誰も思っていなかったよ。」 「人が人を思う心っていろいろあるんだね。まさか、こんなことになるなんて。」 ユキは、イタタマレナイと言った感情で、伏せ目がちに呟くように言った。
「友達だからと言って、全てを知っているわけじゃない。 誰でも、知らない面はあるし、隠している面もある。全てを知るのは、不可能。」 「何、それ?」 俺は、思わず尋ねた。大介は、俺に視線を向け、 「伸也が言ったんだ。今となっては、その言葉に尽きるかもしれないなって思って。」
「そうか。伸也には、感謝しなきゃな。あいつがいなかったら、こうも早く判らなかっただろうしさ。」 「そうだな。でも、結局、何者なんだ?あいつは。」 「さぁ?」
|
|