おっさんの方が早かった。まさか娘達が来ているとは思わないもんだから、いつものように玄関の鍵をかけて入って来た。そして、すぐにリビングに入って来ないで、自分の部屋に上がって行った。
今までの経験から、何か後ろめたい時は先ずは二階へ上がる癖がある。
「開けて〜〜鍵がかかってる!」
と玄関ドアの前から娘が携帯で…
「何でチャイムを押さんのよ〜あぁそっか ワンワン吠えてうるさいもんね」
「途中ですれ違った気がするわぁ。ライトが片目の車やし、違うと思ったけど…」
お腹がペコペコの娘はとりあえず食事を始めた。
おっさんがみんなの居る部屋に入って来て食事を始めようとした時、下の孫がいきなり 「飲んで来たんか?」と強い口調で切り出した。
そして、今して来た行動のすべてを話した。 まるで、私が乗り移ったかのような喋り方に、笑いをこらえるのに必死だった。 立て板に水のごとく、説教が止まらない。 それに対して話を逸らし、のらりくらりと反応の薄いおっさんにキレた孫。
「もう 知らん!!じいじなんか 嫌いや!」
と、こっちに背中を向けて、ソファーに膝を抱えて座り込んでしまった。 泣いているのは分かった。言うても言うても通じない悔しさに腹を立てたのだ。 この悔しい思いは私も長年味わって来たので、孫の気持ちは良く分かる。 好きなじいじの事が心配で心配で、孫はポケットのタバコを取り上げて隠したり、飲んでないか確かめたり、それはそれは我が家に来る度もう大変。 毎回チェックが欠かせないのだ。
果たして飲んでいたのか、お金を借りるためにあそこに車を止めていたのか見事に 誤魔化されてしまった。 私の詰めが甘かったと娘が言う。
「○○屋のおっさんに話しがあって行ったんじゃ 飲んでへんわ、金も借りてへん!」
○○屋は専用の駐車場がある。クソオヤジにまたしても嘘をつかれた! それよりも心配してる孫を泣かすなよなクソオヤジ… これでもまだ繰り返しアホな事するようなら、もうお前は人間やないで。 家族が心配してる姿を見て楽しんでいる様にも見える。 かまって欲しいために、わざと困らせてる子供みたいに見える。
ああ…おぞましい。
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