20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第93回   こんなになっても夫婦で居る事の意味・そのT
 癌の手術が今の生活に関係している事はないはず。
ただ、おっさんは すっかり変わってしまった。
要するに男が仕事を無くすと、廃人に近いものがある。
 積極的に仕事に就こうという意欲は見られない。ただ言い訳しながらだらだらと過ごす日々。昔のあの勢いはどこへ行ったのかと思うし、同一人物には思えない。
わが亭主ながら、こんな姿は正視出来ない。

 徐々におかしな行動が見え始めた。
焼酎を飲みながらダイニングの椅子に座ったまま漏らした、と言うより完全に出てしまったのだ。しかしそれに気付かずに居る。
立ち上がったときにはふらついて歩けずにこけた。頭を打って、首筋に血が流れていても気がつかない。
トイレから出て来てまたこけた。

「あんた! 出てるでぇ〜オシッコ出てる! お尻がベタベタやん、気がつかんの? 頭からも血が出てる。ここまで垂れてるやん! どうなん?」

「何がやぁぁ! うるさい! 何にも出とらんわ!」

ああぁ、ついに、ついにボケたか… これは酒の精と思う。
若い時のように身体が酒を受け付けなくなってるし、酒が弱くなってるのは確かだ。

「もう明日から、一滴も飲んだらあかん! こんなになっても正気やと言い切るか!
自分のしてる事が分かってるのか? 酒の精やで、こんなになるのは。病院行こ! 診てもらお」

 椅子に座ったまま、出てしまったのは2回。
痴呆が出てきたかも知れない不安が襲う。
酒さえ飲まなければ…壊れて話の通じないおっさんにストレスが溜まる。

 酒で壊れてしまうなら、飲まさなければいい。
分かっていても私には禁酒を強要する事が出来ない。
家で完全に酒を取り上げると、外で飲むのは目に見えている。
が、飲む量はかなり少なくなった。
 すべて酒の精とは思わないけれど、おっさんが徐々に壊れていくのを感じる。
無気力で、生産性がなく活気のない姿に『老人』を感じる。
覇気のない姿を見るのは辛い。かつてのバリバリ働いている姿がやけに懐かしい。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 22229