本当に惚れたのなら、自分の事よりも先に相手の事を考えるだろう。 その惚れた弱みというのが、思いやりと愛情だと思い込んでいたところがある。 と言うのは、私はいつも強かった。 何があっても切り抜けて来たし、おっさんに弱みを見せることが無かった。 しっかり者の嫁さんなのだ。
無いお金も有るように見せた。 愛人問題以外にも、若い時に浮気の気配もあったが、問い詰めることはしなかった。 不安を抱えていてもおっさんに相談する事も無かった。 私の体調が思わしくない30代の頃、ひとりで病院巡りをしたのを覚えている。 自分で解決できる事は、最初から話さなかった。 この強さが愛情の裏返しで、更に裏目に出たのかも知れない。
顔も見たくない程の憎しみは一体何なのか。 いくら考え抜いても、私にはおっさんへの不信感しかない。嫁さんに何にも言わない、嘘をつく、隠し事をする。 こんな基本中の基本が出来ていないんだもの、夫婦というよりも先に人間として失格。 そこに私が裏切りを感じたのは無理もないと思う。
何でも自由に話が出来て、冗談を言い合って笑っていられるはずが、年月と共に拒否体質に変わり、もう話をするのさえ疎ましくなる。 おっさんの言葉は真実味に欠ける。そんなヤツとは話など出来るわけも無い。
昔を懐かしんでも始まらない… けれど昔があるから今に繋がっている訳だし私は心地いい老後の生活を描いていただけに、ひとつ屋根に暮らしながらも別々の生活をしている感の居心地の悪さは、私の人生の汚点に思える。
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