歳を重ねても、自然体で夫婦を演じられる人は素晴らしいと思う。 お互いにいい所だけを見せないで、己をさらけ出したままでも愛し合える夫婦がどれくらい居るのだろうか。 私には、それが出来ると信じていた。
一番好きだった人が、一番嫌いな人になる。長い長い年月は人を変えてしまう。 若き日のおっさんは素敵な人だった。先に惚れたのは私。誰にも渡したくないと思った。 今もその時の思いは残っている。大事に育てた愛は、途中の紆余曲折も跳ね除けた。
渡辺淳一の『ひとひらの雪』も『化粧も』も『失楽園』『別れぬ理由』もすべて私の結婚の後で書かれたものである。 一様に渡辺淳一の恋愛本は同じような内容が多い。シチュエーションが違うだけである。 結婚後に新刊を読み漁った時、自分に置き換えることが出来るくらいピッタリ来た。 ピッタリ来たのは、心の部分である。不倫に関しては、私は経験が無いけれど、狂おしい感情は理解できる。 こんな小説を読んでいるようじゃ、幾つになっても夢見る夢子さんだわね。
結婚すると決めた時、 おっさんからの意思表示は無かったように思う。 これが間違いの元なのかも知れない。私が押しかけて同棲が始まった訳だし… 今更だけど、しつこいけれど、どこかで歯車が狂った事は否めない。
次々に降って湧いたかのような出来事は想定外な事。 今思うに、私は勘違いしていたのかも知れない。 結婚そのものが錯覚かも知れない。 通常なら、生活の中であり得ない事が起きても、信頼で繋がっている夫婦ならばきっと協力して乗り切るための努力をするのだろう。
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