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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第84回   同時進行のモモの死
 さて、モモは日に日に弱っていき、食欲もなくただ無言で横たわっているだけだった。
回復しないと分かって看ているのはとても辛い。
床ずれが出来て皮膚に穴が開き、骨が見えるまでにひどい状態になった。
一日に数回患部を消毒して薬を塗りガーゼを当てる。
腐らないように、蛆が湧かないように、先生はそれだけを注意するように言われた。
毛の色も変わり抜けて まだらになった顔や身体。それに匂いもひどくなってきた。
鳴く訳でもなく、うめき声をあげる訳でもなく、目を見開いて同じ態勢で寝ている。

 死へ向かっているモモを 抱いてやるしか出来ない介護だった。
最後がいつ来てもいいように、ひたすら抱いてやった。
抱いてやると安心したように穏やかに見えた。
腕の中で最期を迎えてくれたらと願った。

 この夜、ひょっとしたら、今晩が最後かも知れないと感じた。
おっさんに「もう今夜が最後の気がする。よう見ておいてやって」と言うと

「モモ、よう頑張ったなぁ…」元気な時の朝の散歩係のおっさんが言った。

私は「おまえはしっかり生きたんだから、もうランのところへ行ったらいいんだよ。
もう頑張らなくてもいいからね…早く行きなさい。長い間ありがとうね…」

こう語りかけて顔を撫でて、足をさすってやり、後を惹かれる思いで2階へ上がった。
私は疲れきっていて、頭痛の前兆もあったし、その夜はベッドで寝たかった。
果たして、辛かったのはモモの方なのか私の方なのか。

「ラン、もう迎えに来てやって、早くモモを連れて行って」と声に出して言う。

 翌朝、昨夜と変わらない寝姿ではあったけど逝った直後だった。
身体にはまだ、ぬくもりがあった。
寝たきりになって70日間。15歳の誕生日を2週間後に控えたお盆に逝ってしまった。
先に亡くなったランが迎えに来てくれたと思った。

もう頑張らなくていいよ、虹の橋へおいでとばかりに……
それは8月13日の早朝だった。


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