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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第81回   おっさんの部屋の引越し
 おっさんが入院している間に、娘、息子達と一緒におっさんの部屋の引越しをした。
なにしろ病気は癌だし、どっちにしても長くは生きられないだろうと思っての部屋替えだ。
今まで一番広い部屋を占領していて、商売をしていた頃の要らなくなったもので
ベッドの周りが溢れかえって
それはそれは汚く散乱した部屋だった。
私もおっさんの部屋の掃除や片付けなどはまったくしていなかった。
片付けてやろうなんてそんな気持ちにもならなかったのだ。

 私の隣の部屋は息子が使っていた8畳くらいの広さで、ベッドを入れても十分余裕がある。
私の隣にしておけば何かの時にも様子が分かりやすいと思った訳で…
要らないと思われるものは一ヶ所にまとめて置いた。
退院後に自分で選別して捨てればいいと思った。が、いまだに手を付けていない。

 今までのベッドはあまりにもお粗末なので、まずベッドを購入した。
布団も何もかも新しくして、部屋もキレイに片付けて いつ退院してもいいように準備した。
部屋を移動するだけの事がこんなに大変だなんて、古いものや要らないものが多すぎる。
私一人ならこんな面倒な事はしなかったし、私はともかく娘や息子が、特に息子が積極的に事を運んだ。
オヤジさんを気持ちよく快適に過ごさせたいと思ったらしい。

 私は複雑だった。
闘病生活って事になるのだろうか、この先はどんな事になるのだろう。
癌の終末は家に居る事など出来ないのではないか…
寝室が二階では不便ではないか…
テレビなどで見る癌の終末医療の光景が目に浮かぶ。
5年を無事に過ごせなかったら、おっさんもやがては、苦しい終末を迎えてくたばるのか?

 娘は「案外5年を平気でクリアーして生き延びる予感がするよね、肝臓も膵臓も肺もガタが来てるのに、酒やタバコ飲んでても平気やし癌なんて関係ないわぁ」

 恐るべし おっさんパワー!
長年、さんざん私を苦しめたおっさんなのに、子供達から優しい扱いを受けておまえは幸せだよな。
癌にかかろうが、何が起ころうが 私はあんたを憎んで生きて行くよ。


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