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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第80回   そのU
 不死身だわ、まったく不死身としか言いようが無い。
他の家族なら、こういう時喜び合うんだろうけど…
多くの癌患者様には本当に申し訳ない。不愉快で不謹慎な事でしょう。

 が、我が家に限り一般的にはタブーとされているこんな状況はありな訳で…
すべての投与が終わり、血液検査などに異常が見られなかったので1週間後に退院。
この退院の時、ナースステーションに居る看護師に挨拶をしたが無視。
ステーションの側にエレベーターがあるにもかかわらず 誰一人見送る者が居ない。
たくさんの荷物を抱えて、あきらかに退院と分かるのに血の通わん看護師や。

 癌から生還して退院するというのに…いやいや、これはかなりおこがましい事で。
この病棟には重い病気を抱えた患者は居ない。皮膚科だから。

 この病院の皮膚科はアレルギーやアトピーの治療では有名らしく、遠方からの患者も多いと聞く。
アトピー性皮膚炎のひどい患者さんを、ここに居る間に何人も見た。
みんな透明人間のようになって1週間ほどを過ごしている。
目と口だけくり抜いて、頭の先から身体中を包帯でぐるぐる巻きにした大人の患者。
結構異様な光景だ。
これがまた退院の時にはキレイなつるつるの肌になって退院して行く。

 さてさて、おっさんは荷物を持って先に帰ってくれと言う。
久しぶりにシャバの空気を吸いたいと言った。おまえはヤ○ザか。

 モモの容態は話してあったが、変わり果てた姿に驚いていた。

「わしが帰るのを待っとったか・・ヨシヨシ」と頭を撫でていた。

 同時進行した『ひとりといっぴき』だったが、私はもしかしたら、モモがおっさんの身代わりになりもっと早くに死んでしまうかも…
と、嫌な想像をしていたのだ。


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