また一からコツコツと、積み上げるしかない。 この街は懐かしい故郷…何の違和感もない。
むしろ28年ぶりの帰郷は懐かしい思いとともに 開放感さえあった。 新たな気持ちでスタートするには十分な環境だった。 実家から少し距離のある、今までのしがらみの無いこの土地に家を建てられた事も出直しするには最適だった。 おっさんも新たに頑張る意欲が湧くというもの。
娘は残念ながら、この家で暮らすことは出来ない。 離れた所で寮暮らしなので、休みに時々友達と一緒に帰省した。 息子の通う高校はすぐ近くにあった。 何事も無く新しい家でそれなりの生活を楽しんだ。
ここへ来て一年後くらいだったと思う。 それもまたある日突然にやって来た… 出勤しようとした玄関先の立ち話でその幕が開いた。
「商売始めたし、資本金も事務所も要らん商売や」
「何? 言う事よ、商売ってどんな?」
「今の仕事はどうするのぉ〜」
「心配は要らん、ええ商売見つけたし、今の仕事もしながらやる!」
と言い残して出掛けた。
ああぁ またかよぉ…… 営業マンでバリバリやってたし、新しい仕事は性に合わんと思っていた。 やっぱりなぁ、何をするとか詳しい事は何にも知らされないままで 私の頭の上にはまた暗雲がかかり初めた。 けど、家も建てたしローンの支払いもある。 アホな事はしないだろうと思いたかった。
結婚する時
「お前は働かんでもええ、家を守ってくれたらええ、お前や子供はワシが食わしてやる!」
と言い切った。
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