おっさんの癌はステージ3に近いか4に近いかの際どい判定だった。 5年後の生存確率は40%。これはどう受け止めるべきか。
いよいよ抗癌剤の投与が始まった。 毎日の点滴を1週間続ける。それと2日に1度患部に直接インターフェロンの注射。 これからが苦しみの本番だとばかりにちょっと期待する私と娘。 抗癌剤の投与は、人生観が変わるくらい辛いと聞いていた。 「これで少しは、生き方がかわるかなぁ…苦しんでくれた方がいいなぁ」 こんな事願う母娘もそうざらにはいないだろう。
私はとりあえず最初の方はマメに通ったが、モモの事があるので短時間でさっさと帰る。いつ見てもおっさんは普通で しんどそうな様子は無い。 何一つ副作用が無いのだ。食べ物の味がちょっと変わった程度だった。 髪の毛も抜ける事なく、まったく正常な身体に見える。 タバコを吸いに喫煙室に通い、長時間談笑している。
私は孫を連れて娘も一緒に、これでもよく通った方だ。 病室に行く前に、先に喫煙室を覗くと必ずそこに居た。暇を持て余している。 おっさんは
「副作用が無いのは 抗癌剤が効いてないのかも知れん」
と逆に不満そうだった。 こんなに副作用の無い人は初めてです。とまで言われていた。 どこまで悪運が強いのか、苦しい治療を期待したのに 肩透かしを食らったよ。
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