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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第79回   いよいよ抗癌剤投与・そのT
 おっさんの癌はステージ3に近いか4に近いかの際どい判定だった。
5年後の生存確率は40%。これはどう受け止めるべきか。

 いよいよ抗癌剤の投与が始まった。
毎日の点滴を1週間続ける。それと2日に1度患部に直接インターフェロンの注射。
これからが苦しみの本番だとばかりにちょっと期待する私と娘。
抗癌剤の投与は、人生観が変わるくらい辛いと聞いていた。
「これで少しは、生き方がかわるかなぁ…苦しんでくれた方がいいなぁ」
こんな事願う母娘もそうざらにはいないだろう。

 私はとりあえず最初の方はマメに通ったが、モモの事があるので短時間でさっさと帰る。いつ見てもおっさんは普通で しんどそうな様子は無い。
何一つ副作用が無いのだ。食べ物の味がちょっと変わった程度だった。
髪の毛も抜ける事なく、まったく正常な身体に見える。
タバコを吸いに喫煙室に通い、長時間談笑している。

 私は孫を連れて娘も一緒に、これでもよく通った方だ。
病室に行く前に、先に喫煙室を覗くと必ずそこに居た。暇を持て余している。
おっさんは

「副作用が無いのは 抗癌剤が効いてないのかも知れん」

 と逆に不満そうだった。
こんなに副作用の無い人は初めてです。とまで言われていた。
どこまで悪運が強いのか、苦しい治療を期待したのに
肩透かしを食らったよ。

 


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