おっさんの手術と、抗癌治療が始まる時になって、これはタイミングが悪すぎる。 モモは私に何か試練を与えようとしているのだろうか。 気持ちはモモに傾いていた。 量りにかけた訳ではないけれど、確実にモモの方に重みはかかっている。 手術当日、モモは一泊の予定で、かかりつけの病院に預けた。
夕方6時からの手術と聞いていたのに、時間の変更を知らされないまま病院へ行ったらもう始まっていた。 この病院では入院のたびに腹立たしい思いをして来た。 手術は2時間ほどで終わった。意外と早い。
さすが術後のおっさんはくたばっていた。 親指のぐるぐる巻きの包帯を見て 娘もお嫁さんも
「短くなってないわぁ、切らずにすんだんやわ。ほら長いままやろ?」
担当医からの術後の説明も無いまま、キツネに抓まれたみたいに佇んでいた。 時間が経つばかりだし、小さい子供も居るので遅くなっては困る。 娘は現役の看護師、お嫁さんも元看護師なので、病院の事は素人ではない。
「おかしいよ、説明があるのは当然やし聞いてみよか」
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