親指を第一と第二関節の間で切断する事になった。 悪性で転移性も高い。 すぐに手術となる予定だったのが膵炎が出ていたので、2週間も延期になった。
癌かぁ……
この時、癌保険の解約をする手続きを取るための電話待ちの状態だった。 何というタイミングの良さ! 癌保険はもう必要ないかも知れないと、9年間掛けたものを解約して生活費に回そうと考えていたが、間一髪で救われた。 証書を出して確認し、なぜだかすごく安心した。 それと妙に落ち着いている自分に不思議な気がした。 動揺も無く平然とおっさんの癌を受け入れたのだ。
とにかくこの時頭をよぎったのは、幾ら入ってくるのだろうという事意外に何も無い。 私が痛い思いをする訳でもなく、ここでこの保険を生かさなければと、おっさんの癌の心配などまったく無かった。
指一本ですぐに死ぬ事はないだろう。 どんな治療が待っているのか、想像もつかない。 あえて、あえて言うならばバチが当たったと思った。 実家を売ったりする羽目に追い込まれた事は、天罰じゃないか。 娘も同じことを言った。
「親不孝をしたから、親指を切り落とす事になったとしか考えられんわ……」
大きな悪事を働いた訳じゃないけれど、自分勝手に好きな事をし過ぎたツケだと思った。
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