実は二人の故郷に家を建てて暮らす事にしたのだ。 もうすでに他界しているおっさんの両親が残してくれた古い実家が残っている。 そこに住めば簡単な事ではあったけど あえてそこに住む事を避けた。 この実家は人に貸して家賃をローンの一部にと考えた。
私は家を新築する事にこだわった。 けれど、こんな事情の中で家など建ててる場合じゃない。 でも今建てなければ一生自分の家は持てないと思えた。 おっさんが再就職をして月々返済出来る目途もついたし、私の虎の子が頭金になった。
前向き!前向き!
おっさんはまだ何かを隠してるようだったし 悩んでいる様に見えた。 気乗りしない様子が見られた。
やるっきゃない! なにかあれば家を売ればいい。 こんな見切り発車ではあったけど、私には楽しい再スタートだった。
これまでにコツコツ、チマチマ蓄えたお金の幾らかは、おっさんにあの時に持って行かれ、少なくはなったけど頭金の他にも残してあるしやれる自信はあった。 財テクに励んだ訳ではないけれど、私にはなぜかお金がついて来る。 おっさんの知らないお金を隠し持つ快感はたまらないよ。
夢に向かって走り出した。 毎日図面に向かって夢を描いている時、これ程幸せで楽しい事はない。 図面が次第に立体的になりやがて木の香りに満ちながら完成の日を待つ。 壁紙、床材、色、ライト等 インテリアを決めたりしながら、これからの暮らしぶりを想像する。
こんな至福の時を味わいたかったから、私は家を建てる事にこだわった。
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